でっきぶらし(News Paper)

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270号(2023年02月)5ページ

室内のすすめ

「動物もういないね、帰ろ~」これは、カピバラ舎で放飼場の清掃をしているときによく耳にする、来園者の声です。私はその声を聞くたびに〝まだ先にも動物がいるのに、引き返すにはもったいない″と思っているのです…。

 カピバラ舎の放飼場からは、ふれあい動物園の入り口にあたるインコ舎がよく見えます。インコ舎の鳥たちは収容の必要がないため、終日展示となっていて、開園中どのタイミングでも見ることが可能です。なので来園者は「おはよー」や「こんにちは」と鳥たちに話しかけたり、個体紹介の看板を読んだり、写真を撮ったりとそれぞれの楽しみ方をしています。ここまでは順調です。インコ舎のすぐ隣にはアヒル池があります。収容されて室内にいるアヒルや奥にいるガチョウを見たあと、来園者の目線はカピバラ舎の放飼場へと移されます。来園者からすると、目の前には放飼場の掃除をしている飼育員がいるだけ、ふれあい動物園内の奥側も含め、目に見える範囲に動物がいない状況です。ここで、足がピタッと止まり、冒頭の言葉へとつながるのです。

 ふれあい動物園にいる動物たちは、終日展示をしているインコ・オウム、ウサギ、モルモット以外が、平日だと午後のふれあいが終わった14時半以降、土日祝日だと15時以降に、順次放飼場から収容され室内へと移動をします。なので、来る時間によっては動物が外に出ていないことがあります。外に出ていない=見ることができないと考えてしまいがちですが、ふれあい動物園内の獣舎は、来園者が室内を見ることができる造りになっています。でも見たかったのは、室内にいる姿じゃなくて外の放飼場にいる姿だったという方も多いのではないでしょうか。

 そんな方々にも、室内はおすすめです。動物たちが室内に移動するのは、放飼場の清掃のためもありますが、夕ご飯を食べるためで、室内に戻るとお食事タイムがスタートします。室内は放飼場より圧倒的に動物との距離が近いので、間近で採食の様子を観察することができます。同じ動物種でも、個体によって好き嫌いもあり、食べる順番やスピードも異なるので、何度見ても楽しむことができます。獣舎内に響く咀嚼音を聞くことだってできますし、動物特有のにおいを、より強く感じることもできちゃいます。ご飯を食べ終わり、まったりとくつろいでいる姿を見ることもできるかもしれません。そのチャンスを逃してしまうのは〝もったいない″と思いませんか?

 室内の魅力がより多くの来園者に認知され、カピバラ舎の手前でUターンされなくなるまで「動物さんたち室内にいるので、よかったら奥まで見ていってくださいね~」と声をかける日々は続きそうです。

(中川 輝美)

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