281号(2025年03月)7ページ
新米獣医のとある1日 ~休園日編~

はじめまして!こんにちは。今回の病院だよりは今年度の4月に入庁し、日本平動物園にやってまいりました新米獣医が担当させていただきます。動物園が休みの休園日に、いったいスタッフは何をしているんでしょうか?休園日だからスタッフもお休み…?そんなことはございません。今回は休園日のとある1日を紹介いたします。
朝病院に出勤すると、処置室に手術に必要な器具、タモ、皮手袋が用意してありました。
午前中はアビシニアコロブスのお尻の手術の予定がありました。アビシニアコロブスの1頭がここ最近お尻を気にしていて、飼育員と確認すると、お尻にお花が咲いている様子がうかがえました(脱腸ぎみでした)。捕まえて鎮静をかけて、お尻を処置しよう!ということでいざ捕獲大作戦です。先輩獣医が寝室でタモをふり、捕獲後に麻酔薬を注射し、麻袋につつんで病院へ搬送しました(車を使って搬送しますが、先輩獣医は汚れてしまって車に乗れず、走っておりました…)。手術台で麻酔のガスをかがせながら、先輩獣医はお尻の処置を、私は麻酔の管理をしました(このときもう一人の先輩獣医の方も手術の補助に入ってくださり、大変心強かったです)。犬猫の動物病院で経験をたくさん積まれた頼りがいのある先輩獣医の手術をそばでみて、勉強させていただきました。手術は無事終了し、麻酔から醒めそうな様子でしたので、獣舎にもどすことになりました。ここで私が搬送するために車を取りに行こうとしたのですが、アビシニアコロブスの入ったケージを抱えて先輩が獣舎まで走って行っているではないですか…。まだまだ自分の一歩が遅いなあ、と反省いたしました。
お昼休憩をはさんで、午後は健康診断のためにおこなう採血の予定が入っておりました。本日採血する動物はブチハイエナ2頭(ツキとセレン)とオランウータンのオスのジュリーで、飼育員が無麻酔で採血できるようにトレーニングを積んでくれています。まずは先輩獣医とハイエナの採血に向かいました。飼育員が強化子(ハイエナは肉のペーストを水にとかしたもの)を与えて頭をあげている状態を作ってくれるため、その間に首の血管から採血します。無事2頭の採血が終了し、次はオランウータンの番です。ここで先輩獣医が「オランの採血にいっておいで」と。私事ではございますが、私も犬猫の動物病院に2年ほど勤めていた経験があり、採血ももちろんやっていましたが苦手意識がありました。動物園で働き始めてからは徐々にやれることが増えて自信がついてきていますが、技術面はまだまだと感じることが多々あります。1人で採血に向かうのは少し心細い気持ちと、任せてもらえたという嬉しさもちょっぴりかかえながら、オランウータン舎へ。ジュリーは採血する前から腕をだしてくれており、やる気マンマン(?)でした。そんな協力的なジュリーと飼育員の助けもあり、採血も無事に行うことができました。(が、針を刺したときに少し痛かった様子で、刺した部位をきにしていました…なるべく痛くないように次は採血できるようにしよう、とまた反省)採血したあとは血液検査を行い、大きな異常がないかを確認しました。
ここに書いたのはほんの一例で、大型動物(猛獣など)に麻酔をかけて処置したり、イベント準備は休園日に行うことが多いです。そのためお休みといいつつスタッフたちが奮闘しております。私も動物の健康管理の支えになれるように日々邁進してまいりますので、あたたかく見守っていただけると幸いです。
(松永)