でっきぶらし(News Paper)

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214号(2013年10月)4ページ

今年の夏も迷子がいっぱい

 9月になって、だんだん涼しくなってきました。今年も動物病院の夏は大忙し。なぜかというと、迷子がいっぱいやってくるからです。しかし、迷子といっても、人間の迷子ではありません。「親とはぐれたのかな?」「飛べないみたい、ケガしているのかな?」と勘違いされて保護された動物の子供たちです。今回はこの夏保護された、動物の子供たちのお話です。
 まずご紹介するのはカケスという鳥。「いきなり良く知らない鳥だな~」なんて思わずに、どんな鳥か調べてみてください。水色と黒のシマシマ模様の羽に、青い目。一度見たら覚えられるキレイな鳥です。カケスはカラスの仲間で、カラスの仲間はとても知能の高い鳥として知られています。保護初日は餌を見せると口を開けるとても素直な鳥でしたが、次の日から態度は一変。捕まるのを嫌がり、餌を与えようとしても口を開けないどころか、口に餌を入れれば好きではないものは意地でも吐き出すようになったのです。とても頑固な性格からなかなか体重も増えず心配しましたが、しばらくすると自分で餌を食べられるようになりました。その後、広い部屋で色々な種類の鳥と暮らして過ごしましたが(動物も、1頭で育つよりたくさんの動物と一緒に暮らす方が頭を使い、暇な時間が減ったり、社会性が身についたりします)、その間も人に必要以上に馴れることもなく、保護されて2ヵ月後、無事に保護された場所に帰すことができました。飼育している間も、餌の時間が近づくと「まだかなー」と窓から覗いて待っていたり、初めて見るものにも興味津々で近づき遊んでみたり…他の鳥と比べてよく動くので、行動を観察していてとても面白かったです。
 一方、うまくいかなかったこともあります。次に紹介するのはフクロウです。フクロウという鳥を知らない方は少ないと思います。大人になっても可愛らしいこの鳥は、ふわふわの羽で包まれたヒナの時はまるで動くぬいぐるみ。保護されたヒナは、そんなふわふわの時期で、生後約半月と思われました。よく食べ、よく鳴き、よく遊んで過ごしたフクロウは、特に問題なく成長したように思われました。…が、問題が出てきたのは飛べるようになった頃からです。多種との同居が難しい猛禽類であるフクロウは、カケスのように一緒に暮らす鳥がいませんでした。人としか接しなかったため、本来のフクロウが学ぶべき色々なことが学習できなかったようです。そのため、いつまでも人に甘え、昼間に生活するようになり(フクロウは夜行性です)、初めて見る餌には怖くて近づけないフクロウになってしまいました。しかし野生復帰した後にこれでは困ります。そこで野生復帰に向けて工夫をしましたが、餌に関すること以外、大きな改善は見られませでした。フクロウの場合は「夜行性」「猛禽類」など、小鳥類と比べて配慮が必要なところが多かったため問題が目立ったのだと思いますが、どんな鳥にとっても、人が育てることで多少なりとも影響が出ることは容易に想像できます。フクロウやその他の鳥と接する中で、野生に帰す動物たちを育てる時は、ただ餌を与えて大きくすればよいわけではないのだな、と痛感しました。
 話は変わりますが、今年実施されている「夜の動物園」。ここでも迷子になる子が時々います。…が、その場で待っていると親御さんは案外近くにいることが多いものです。鳥や動物たちも同じでヒナが一人ぼっちに見えても、お母さんは近くにいるのかもしれないですね。また、今年は去年と比べ、ケガや病気をしていないヒナの保護(一般に「誤認保護」と呼ばれています)の件数は残念ながら増えてしまっています。様々な動物との出会いは、私たちにたくさんのことを教えてくれますが、同時に私たちは身近な動物とずっと一緒に暮らせる方法を身につけていく必要があるのかもしれません。来年の夏は、動物の(人間も)迷子を減らせるように、私もたくさん工夫をしていこうと思っています。

動物病院担当 永倉 頌子

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