215号(2013年12月)7ページ
スポットガイドだより No1
《9月21日 ブチハイエナ》
9月21日(土)・13:30より、ブチハイエナのスポットガイドを行いました。
実は、今回のブチハイエナのガイドは、本来ならば9月15日(日)に開催する予定でしたが(基本的に当園のスポットガイドは毎月第三日曜日に行う事になっています)、天候が悪く、止むなく21日(土)に順延せざるを得ませんでした。インドア施設が増えてきた当園ですが、旧施設?に属するブチハイエナの居る場所は、事実上アウトドア施設であり、こうした雨天等の悪天候にガイドの開催日が当たってしまうと開催が不可能になってしまいます。雨風の中でのアウトドア系ガイドは、イベントに参加してくださる観客の皆さんはもちろん、ガイドを行う担当者やガイドの対象となる動物達にもかなりの負担がかかるからです。
さて、今回のブチハイエナのスポットガイド。担当は、ベテランとして高いレベルの域に達している男性飼育員が行いました。長い飼育員としての時間と経験を積んでいる人なので、表現は妙かも知れませんが色々と抜かりなくガイドをこなしてくれました。
ブチハイエナ……実はこの動物程、様々な誤解をされている動物は居ないと言って良く、彼らの実態を皆さんにお聞かせすれば、大抵の方々はあまりの意外な実像に驚かれます。ストレートにお話ししますが、いわゆる【悪い奴・ずるい奴】と思われているブチハイエナのイメージは、表現的には良くないかも知れませんが、ほぼ、デマです。【極端に歪められたイメージ】と表現した方が良いかもしれません。
まず、彼らは草原の掃除屋と表現される事が多いのですが(確かに死肉や腐肉を食べたりもしますが)、実際は自分達が食べる物の殆どを、狩りで得ています。彼らは非常に優秀なハンターであり、優れた嗅覚・聴覚・視覚を持ち、時速数十Kmのスピードで2時間程度なら延々と休み無く走り続ける事が可能です。その驚異的な持久力で、狙った獲物を追跡し捕獲します。また、強力な顎の力や歯を使い、他の肉食獣が食べる事の出来ない太い骨の中の髄を、骨を噛み砕いて(と言うより粉砕ですね)食べる事が出来ます。骨髄は、とても栄養価が高く、つまりブチハイエナは肉食獣の食物の、一番美味しくて滋養がある部分を食べる事が出来る動物なのです。
更に、彼らは一般の方々が頭の中でイメージしている外見よりも、遥かに大きな体格をしています。初めて彼らを直接見た方は、大体、その大きさに驚かれます。当園に居る2頭のブチハイエナは、共にオスです。その彼らの大きさをご覧になって皆さんは驚かれる訳ですが、付け加えれば彼らオスよりもメスは更に大きな体格をしています。体長180cmもある個体の、報告さえあるくらいです。
ブチハイエナは、クラン【clen】と呼ばれる数十頭の群れを形成し、その指導者はメスです。この理由で、メスの方が体格が良いと言われています。クランは極めて効率良く機能する群れで、バックと表現される3~4頭の小家族の大きな集合体です。要するにブチハイエナの群れは、沢山の家族が集まり共同体を作っているのです。そして、その集合体・共同体の凄い処は、群れの中に居る餌が上手く獲れない弱い個体や、狩猟能力が衰えた老齢の個体等が殆ど【飢えない】のではないか?…との観察報告がある事です。これが何を暗示しているかと言えば、【彼らは皆で弱者を保護し養っているのではないか?】と推測できると言う意味です。ブチハイエナは、私達飼育員の様にごく身近で関わっている者達なら実感できる事柄ですが、知能が大変高く、温厚で友好的です。関係者が近くに来ると本当に嬉しそうにはしゃぎまわり大歓迎してくれる、甘えん坊で、とても可愛らしい動物です。
どうでしょうか?意外でしたか?
ZOOスポットガイド班長 長谷川 裕