でっきぶらし(News Paper)

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219号(2014年08月)2ページ

おさるとホースと雨合羽と

 「ねえねえ、あそこにヘンなサルいるよー。」
 閉園近くになるとモンキーアパートに出没する、ホースを手に持った紺色のサルが、私です。
 「でっきぶらし」読者の皆様、はじめまして。4月から飼育係に配属されました、新人です。新人とはいっても、奥能登で牛を相手に4年、静岡市保健所で10年を経ておりますので、いささかフレッシュさに欠けております。
 動物園での仕事はこれまでの経験がほとんど通用しない新世界。「生まれて初めて」が盛りだくさんです。初めのうちは毎日どこかに生傷をこさえておりました。ええ、今でもこさえておりますが。
 担当している中型サル舎、愛称モンキーアパートは、動物園の入り口から近いところにある6つのケージ。現在、ニホンザル、マンドリル、シシオザル、アビシニアコロブス、ブラッザグエノン。が入居しています。
 どの種類も、そして慣れてきたらどの個体も(顔と名前が一致するのにはしばらく時間がかかりました。もっとも、人間も顔と名前を一致させるのは苦手ではありますが)、顔も性格もバラエティ豊か。毎日彼らの個性に振り回されながらいろんな汗をかいております。
 まず振り回されたのが、ホース。「サルじゃないんかい!」というツッコミは各自心にしまっておいてくださいね。掃除の際のホースの扱いに、悪戦苦闘の毎日。サルたちの食べ残しや糞、丸太をかじった木くず(これが時にすごい量になるのです)をホースからの水流で流し、まとめるのですが、初めのうちはなかなか思うように水流を制御できず、長靴の中はびしょ濡れ。ええ、未だに靴下が水没することはありますが。
 さらに、サルの行動範囲は立体的、3次元的、3D。床、止まり木、壁とあらゆるところに糞があります。それらを見つけて速やかに排除するのがまた慣れないと大変。どのサルにもおおよそ決まった「うんちスポット」があって、その傾向が掴めればそこを重点的に攻めれば効率が良いのですが、時には「まさかこんなところに」と思わせるところに糞をしていたりします(直接排便だけでなく、マンドリルは手で壁や床に塗りたくりますし、シシオザルは壁に投げつけたりもします)。やっと終わったと思って振り向いた目の前にぺったり残っていた時の脱力感ときたら。
掃除の愚痴ばかり書いてしまいましたが、「飼育は掃除に始まり、掃除に終わる」とあるベテラン飼育員の方がおっしゃっていました。某大型テーマパークの清掃員の如く、スムーズに、エレガントに掃除ができるよう、諸先輩たち(年齢は10以上年下だったりもしますが)のご指導を仰ぎながら日々精進する所存です。
 また、中型サル舎では、近々、マンドリル、ブラッザグエノンの繁殖に向けてアクションを起こす計画があります。皆様にこの紙面で良いご報告ができるよう、及ばずながらサポートしていきたいと思っています。
 最後に、最近の新鮮な驚き(個人的に)ネタを。動物の餌にする「冷凍マウス」が先日宅配便で届いたのですが、伝票を見ると、「品名:冷凍食品」 …うん、まあ、確かにね。
それでは、ごきげんよう。さようなら(「花子とアン」の美輪さん風に)。

飼育係 山田 大輔

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