223号(2015年04月)6ページ
ZOOスポットガイド
1月18日 バーバリシープ
2015年最初のスポットガイドは、バーバリシープでした。シープ(Sheep:ヒツジ)という名が付いていますが、ヒツジとヤギの両方の特徴を持った不思議な動物です。「バーバリ」とは北アフリカ沿岸の一帯を示す地名で、同じ地域に生息するサルやヒョウはそれぞれバーバリーマカク、バーバリーヒョウと呼ばれています。ヒツジやヤギが人類の生活に大いに役立ってきたように、バーバリシープもとても重要な動物で、肉や毛皮は地元の遊牧民の生活を支えてきました。しかし、1950年頃からハンティングスポーツを目的としてヨーロッパやアメリカへ持ち込まれ、一部の個体が野生化し増殖している一方、本来の生息地では乱獲などにより数を減らしています。
当園で飼育しているバーバリシープは、草食獣舎の完成に合わせ2013年3月に東京都立大島公園から来園しました。新しい草食獣舎は、敷地の高低差を利用して、バーバリシープの生息する岩場環境が再現されています。翌2014年の5月には、16年ぶりに赤ちゃんが誕生しました。生後8か月を過ぎたスポットガイド当日も、母親のそばに寄り添う愛らしい姿が見られました。飼育担当者がガイドを行っていても、バーバリシープたちは岩場の上の方に居座り、のんびりこちらを見下ろしていました。人間の感覚では、岩場はとても危険な場所に思えますが、崖や岩場を平気で駆けることができ、明るい茶色の毛色が保護色になるバーバリシープにとっては安息の場所のようです。少し警戒心が強く、なかなか近づいて来てはくれませんが、高い崖を颯爽と駆け上るクールな姿や、大きな角で背中をかく御茶目な姿まで、様々な表情を見せてくれます。運が良ければ水浴びをする貴重な姿もご覧になれますので、じっくり観察してみてください。
飼育係 横山 卓志
2月15日 熱帯鳥類館
今回のスポットガイドは、真冬でもポカポカ暖かい、熱帯鳥類館で行いました。熱帯鳥類館はオニオオハシなどの熱帯(雨が多く暖かい地域)に生息する鳥たちを集めた施設です。展示室は全部で9部屋あり、そのうちの1部屋は和鳥舎といって、何故かメジロやヒバリといった日本で見られる鳥を展示しています。これは保護されてきた鳥たちで、体力は回復しても骨折等でうまく飛べなかったりと、室内展示は可能でも野生で生活するのが難しい個体を展示しています。
当園で飼育している鳥たちは、カラフルで鮮やかな色合いが特徴ですが、今回はその中でも一際特徴的な、オニオオハシ・ニシムラサキエボシドリ・サイチョウの紹介をしました。オニオオハシ、サイチョウはオレンジ色の大きなくちばしが目印の鳥です。サイチョウにはくちばしの上にサイのツノのような飾りもあります。オニオオハシのくちばしとサイチョウのツノは、重そうに見えても実は中身がスカスカで、見た目より軽いところが共通しています。対照的なのは目の鋭さと性格でしょうか…オニオオハシの目はクリクリしているのに対し、サイチョウは鋭い目をしています。オスが両方とも臆病なのは共通していますが、オニオオハシのメスは人懐こいのに対して、サイチョウのメスは攻撃的です。なので、飼育担当はサイチョウの部屋を掃除するときが一番怖いです。話が逸れてしまいましたが、ニシムラサキエボシドリは全身カラフルな鳥で、表側の羽が青紫なのに対し、内側は紅色をしています。今回はその美しい色合いを見てもらおうと、実際に抜け落ちた羽を持参し、間近で見てもらいました。
順番に園路を巡っていくと、時間がなくて素通りされてしまうことの多い熱帯鳥類館ですが、寒い冬こそ、暖かい館内で、カラフルな鳥たちを見て、身も心も温めていって下さいね。
飼育係 宮田 鮎美