226号(2015年10月)3ページ
ありがとう、マック
8月4日の早朝、アメリカバイソンのオスの「マック」が静かに息を引き取りました。享年23歳8ヶ月でした。23歳はアメリカバイソンでは高齢で、最近では朝、室内で座り込んでいることもあり、体力が落ち込んでいるようでした。それに加えて、このところの夏の暑さがさらにマックの体力を奪ってしまったのかもしれません。8月2日の午後3時ごろ、マックは突然放飼場で横に寝転んだまま起き上がれなくなってしまいました。起き上がれなくなったマックを飼育担当者のほか急遽集まったスタッフ何人か力を合わせてなんとか起き上がらせようとしました。角にロープを掛けて引っ張り上げたり、地面と身体の間に木材などを挟んで角度をつけて起き上がりやすくさせたりしました。しかし動物園の閉園の時刻が過ぎても、まだマックは起き上がることができませんでした。日がだいぶ傾いてきたとはいえ、真夏の炎天下で、暑さはまだまだ厳しいものでした。そのため、マックにはホースで霧状の水をかけてあげてなんとかこれ以上体温が上がらないようにしました。午後5時過ぎになってようやくマックは自力で起き上がることができ、その足で自分の寝室へと戻っていってくれました。なんという生命力でしょうか。よく頑張ったぞ、マック。部屋の中でいつもどおりご飯を食べ始めてくれたので、その日は様子を見ることにしました。しかしこのときすでに、もうマックの体力が限界を超えていたのでした。次の日の朝、マックは寝室の中で再び立ち上がれなくなってしまいました。もう三度(みたび)立ち上がる力は残っていませんでした。横になったマックの口元へ大好きなニンジン、サツマイモ、リンゴを持っていってやりましたが、もう食べることは出来ないようでした。その大きなつぶらな瞳はもはや大好きな食べ物を追うことさえ出来なくなっていました。私はこの時、もうマックとお別れをしなければならないんだと感じました。まだあきらめきれない気持ちの中に目の前の悲しい現実が心の中に割って入ってきました。高齢だったとはいえ、まだマックにしてやれたことはあったはずでした。ごめん、マック。
マックのいなくなったアメリカバイソン舎は、とてもさびしく感じられました。なによりも残されたモモが、一番寂しく感じているのだと思えました。モモのためにも、私は出来る限りの事はしてあげたいです。マックも長生きでしたが、モモにはもっと長生きをしてもらいたいです。
いままでマックを応援していただいたみなさま、ありがとうございました。そして、たくさんの思い出をくれたマック、本当にありがとうございました。これからは天国で思いっきり駆けずり回ってください。
飼育係 山本 幸介