227号(2015年12月)6ページ
この夏の目標(その2)
一方、動物病院のじいやんは9月に入るとにほぼ寝たきりになりました。食欲も少しずつ落ち、自力で食べることができなくなり、飼育員が口元へ運んで食べさせるようになりました。好物の馬肉は一口サイズをミンチに変えたり、少しずつ回数を多く食べさせたり。タオルをフカフカに敷き詰めても床ずれができてしまうので、ゴミ袋に水を入れ特製ウォーターベッドを作ったり。横になったまま排尿するので、おしっこただれ防止にお湯をひたしたガーゼでシャンプーしたり。9月中旬に入ると、腹水がたまり始めたので針を刺して抜いたり、点滴をしたり。9月後半は朝夕各1時間以上じいやんの変化への処置に追われました。10月初めにおしっこが出なくなり、痙攣を起こしました。血圧も低く奇跡的に留置針が入った血管に何とか点滴をして数日、いつもの朝の治療の聴診中、心拍がみるみる変わりそのまま呼吸が止まりました。動物園で暮らす野生動物の最期の瞬間をこんな風に看取ることができるとは思いもしませんでした。その後、解剖をしましたが生前の状態と照らし合わせ、どの臓器もよく今日まで動き続けたなと感じる所見ばかりでした。
夏があっという間に過ぎました。高齢動物達の日々の時間ごと進む変化に、何ができるだろう?何が足りない?ずっと治療で頭がいっぱいでした。大往生を遂げたじいやんには初めての治療法やいろんな工夫を経験させてもらいました。最期まで食べて生きる動物の生命力は本当に尊く感じます。向き合えた日々に感謝でいっぱいです。頑張って夏を乗り越えた、ポンちゃんとじいやんどうもありがとう。さぁ、ポンちゃん寒い冬も飼育員達が万全の準備をしてくれているよ。次の春を一緒に迎えようね!
動物病院係 長倉 綾子