でっきぶらし(News Paper)

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256号(2020年10月)2ページ

名は体を表す

 日本語では霊長類全般を表す言葉として、「おサルさん」がとても広く使われています。一方で、「サル」や「モンキー」という名前が付かないサルもたくさんいます。今回はそんなサルの名前にまつわるお話です。

 日本平動物園では現在20種類の霊長類を飼育していますが、名前に「~サル(ザル)」と付くのは、ニホンザルやリスザルなど6種のみです。ではその他のサルの名前を思い出せますか? 

 正門から猛獣館に向かって歩いていくと、最初に出会うのは中型サル舎のマンドリルです。色鮮やかな顔でとても有名ですが、学名というラテン語の表記を見ると、Mandrillus sphinx(マンドリル属のスフィンクス)。エジプト神話などに登場する、あのスフィンクスです。どのような経緯でこの名がつけられたのか、とても興味をそそられます。

 お次は「ブラッザグエノン」。おそらくお客さんにとって一番馴染みがなく、読みにくい名前だと思われます。獣舎前の看板を見ながら、「ぶらっ…ざ…ぐ?……えのん?」と、どう読めば良いのかわからず混乱される方もよく見かけます。正しくは「ブラッザ / グエノン」です。前半の「ブラッザ」は、19世紀後半のイタリアの探検家サボルニアン・ド・ブラッザ氏に由来し、彼の名声を讃えて名付けられました。「グエノン」というのは、オナガザル科に属するサルに付けられている名前で、13種ほどいます。もともとは「しかめっ面をする/気取った顔をする」という意味を持つフランス語に由来すると言われています。その名の通り、ユーモアあふれる表情をする美しいサルなので、ぜひじっくり観察してみてください。

 アビシニアコロブスは白黒のツートンカラーが美しく、木の葉を主食とするサルです。こちらもオナガザル科(コロブス亜科)に属し、コロブス属やアカコロブス属などの約15種に「コロブス」の名が付けられています。コロブスの仲間は、前肢の親指が欠けている(または痕跡程度しかない)という特徴があり、「コロブス」の語源はギリシャ語の「切断されたもの」という意味をもつ言葉が由来だとか。かつて日本ではイボザルと呼ばれていたこともあるようです。ぜひ前肢に注目して観察してみてください。

 他にも園内には、チンパンジーやオランウータン、ロリス、マーモセット、タマリン、サキなど、「名前にサルが付かないサル」がたくさんいます。世界には、アイアイ、シファカ、ガラゴ、ティティ、ラングール、ルトン、マンガベイ、ヒヒ…などなど、実に様々な名前を持ったサルたちがいます。多種多様で奥深い霊長類の世界への入口として、まずは名前について調べてみてはいかがでしょうか?

(横山卓志)

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