50号(1986年04月)6ページ
動物園の一年(前編)◎七月、ハイイロキツネザルの病変、ベニイロフラ
小型サル舎で飼育されているハイイロキツネザルの状態が思わしくないとの情報は、以前からちょくちょく耳に入っていました。それでも担当していた訳ではないので、口からアワを吹いて倒れたと聞いた時には、いささかド肝を抜かれました。その後も回復しては起立不能になるを度々繰り返したようです。
ハイイロキツネザルは、日本平動物園においてしか飼育されていない貴重なサルです。が、一時見られた繁殖も夢物語。すでに雌二頭だけとなり、もう一頭の容態も思わしくありません。寂しい限りです。
新熱帯鳥類館においては、長年飼育されていたゴクラクチョウが死亡しました。この名の由来は、あまりにも美しいが為にです。極楽にでも行かない限り見ることはできないであろう、と思われてつけられたそうです。ただ色鮮やかなだけでなく、ディスプレイの時に繰り広げる舞いが素晴らしいといいます。今亡くして、一度とてお目にかかれなかったことが残念でなりません。
四日、ベニイロフラミンゴがふ化しました。チリーフラミンゴと合わせて、七羽目。一見、繁殖はスムースにいっているように見えますが、少々気に入らないのは、チリーフラミンゴにしろふ化させるペアが決まっていることです。
つまり、多くのペアがいながら、実際にうまくかえして育てたのは、わずかに三ペアにしか過ぎないのです。それが喜びを半減させ、将来の暗雲にならなければと、つい余計な心配や不安にかられてしまいます。
他に繁殖は、アクシスジカとホンシュウシカがあり、共に順調な発育を見せました。が、毎度のドジを繰り返したのは、フンボルトペンギンのロッキーペア。またまた死ごもりにしてしまったのです。
微笑ましく見られたのは、ナマケグマの母子に、父親も加わって、文字通り親子の展示になったこと。たいてい父親はオミットされてしまうものですが、同居への試みが予想以上に順調にいったようでした。