264号(2022年02月)8ページ
スポットガイド 12月19日 クモザル
12月19日、ジェフロイクモザルのスポットガイドを行いました。実は新型コロナウイルスの影響により、長い間このスポットガイドも中止となっておりましたが、イベントも少しずつ再開という運びの中、人数制限しつつも本当に久しぶりの開催となりました。今回のクモザルのガイドですが、普段に増して担当としては皆様に語りたい事が山ほどありました。内容としては、ズバリ苦労話です!本来であれば「あらかると」欄でしっかり紙面をさいてお話ししたかったところですが、この場をお借りして当日ガイドさせて頂いた内容を再び語らせてもらいます。
当園のクモザルは約1年前に雌のビビが14歳で亡くなってからというもの雄のジェフがメガドーム内のサル島でポツンと一人寂しく暮らしておりました。そこへ昨年、ビビと同じ出身の岡山県・池田動物園から約3歳のリラと名付けられた、それはそれは可愛い女の子が10月10日にやってきました。リラは人間で言ったらまだ中学生くらい、対して雄のジェフは11歳なので人では40歳以上です。
通常サルの同居では先に柵越しでお見合いをして相性を見てから同居という流れになるのですが、まずここで今回の一番の問題にあたります。「ジェフを捕まえる!」この難関を果たしてどうクリアするか?実はジェフは以前(まだこどもの時)捕獲の際、サル島から池に飛び込み脱出を試みた経歴の持ち主なのです。メガドーム内に脱出されてしまったらそれは最悪の最悪です。捕獲の日まで頭の中は四六時中ずっと、上手く捕まえるというイメージトレーニングしかありません。フリーな空間のサルをタモで捕まえるなんて、よくニュースで街中に出たサルを警察官たちがタモを持って必死に追いかけ回すシーンを思い起こしますよね。そう簡単なことではありません。
そこで今回色々なアイデアを練りに練って考え抜いた作戦がこうです。食べ物の中に眠り薬のようなものを混ぜて、少しウトウトした所をタモで無事捕獲。こういう作戦をたて、ジェフに眠り薬入りの食べ物を与えた後、いざサル島へ。しかしボートを漕ぎ始めた瞬間、すでにジェフ君はしばしのまどろみからパッチリと覚醒モード。サル島内をロープを伝ったり縦横無尽に飛び回っています。内心これはもう絶対無理!と思いながらも、とりあえず上陸し捕獲を試みましたが、やはり全然ダメ。これ以上追い回すと本当にまた池へとダイブしてしまいそうなので、ここで捕獲は断念しました。
その後皆で話し合い、一週間後にケージにリラを入れ直接島へ持っていきお見合い、という方式に切り替えました。さあ明けて一週間後、ケージ内のリラに対してジェフはそれほど威嚇する感じはありません。これはイケると判断し、思い切って島へとリラを放しました。
するとどうでしょう。ジェフは突然こんな可愛い子が舞い降りてきたもんだから大興奮、大喜び。約3時間にわたってリラをピッタリマーク!リラから全く離れません。しかしさすがにリラが嫌がりキィーッと泣き叫ぶと、これはまずいとばかりジェフは距離を取る。午前中はこんな調子が続き、午後になってようやく2頭落ち着きを取り戻し、いい感じになってきました。
やれやれと思ったのもつかの間、また大問題発生。その日はやたら冷え込みが厳しく、おまけに雨まで降ってきてしまう始末。小屋の穴グラに入ればヒーターも点いているし、雨にも濡れないのですが、そんなことは今日来たばかりのリラが知るすべもありません。あたりも暗くなってきてしまい18時近くまでこんな状態が続きました。このまま一晩中外で雨に打たれていたら、リラが命を落としてしまう危険もあります。もう真っ暗になってしまったサル島を凍える手で双眼鏡を握りしめ、ひたすら観察し続けた私の目にこの後とんでもない奇跡が・・・。何とジェフがシッポをスルスルと垂らし穴の下にいたリラの手を上へと引っ張り上げて、穴の中に入れようとしてくれたのです。MAXビックリ!!ジェフなんて偉いんだ!その後しばらくすると2頭仲良く体を寄せ合いながら暖かい穴の中へ入ってくれました。
今回のことは私の飼育人生の中でも決して忘れられない思い出となりました。ジェフ・リラ、いい一生を送ってくれ~。
(松永 亨)