でっきぶらし(News Paper)

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267号(2022年08月)1ページ

ありがとう、シャンティ

5月5日の朝、アジアゾウのシャンティ(メス)が亡くなりました。享年53歳、老衰でした。

シャンティが倒れたのは5月4日の早朝、動物園の空が朝日で白み始めた4時40分過ぎでした。前肢に力が入らなくなり、左側へ崩れ落ちるように倒れました。隣の寝室で横になって寝ていたダンボも飛び起き、「どうしたの!?大丈夫!?」と言うように右往左往する様子がカメラに映っていました。シャンティは何度も立ち上がろうともがきますが、体が回転してしまい上手くいきません。スタッフ総出で介助を試みましたが、叶いませんでした。

何度も回転して向きを変えていたシャンティですが、偶然にも、最後はダンボの寝室の方を向いて動けなくなりました。4日の夜は、ダンボも一睡もせずに、ずっとシャンティの方へ鼻を伸ばしたりしながら寄り添っていました。5日の朝、最後の力を振り絞り鼻を動かすシャンティを、ダンボは鼻で優しく触ることおよそ10分。突然、ダンボが鼻を4回振り上げたかと思うと、急にそわそわと歩き始めました。その直後、シャンティは静かに息を引き取りました。亡くなる直10分間、鼻と鼻で2頭は最後のお別れをしていたのでしょうか、ダンボは何かを察したようにも見えました。

シャンティが来園したのは1970年6月11日。以後、亡くなる2022年5月5日までの51年10か月25日をダンボと共に過ごしました。これは、同じゾウ2頭が同じ動物園で継続飼育された期間として日本一の長さになるようです。ダンボとシャンティは日本一の絆で結ばれた2頭だったのかもしれません。開園当初から日本平動物園の看板娘として、訪れるお客様を楽しませてくれた2頭。静岡市民の中には、生まれて初めて見たゾウが彼女たちだったという人も多いのではないでしょうか。

 シャンティの献花台は毎日のようにたくさんのお花と果物、お手紙、絵、写真などであふれ、隣のキリン舎前休憩所を使っても飾りきれないほどでした。ダンボにも「シャンティを亡くして気落ちしているだろうけど少しでも元気が出るように」とたくさんの贈り物をいただきました。シャンティに供えたあとの果物はダンボに与えられ、図らずもしばらくの間毎日がごちそうになりました。きっとダンボも寂しい気持ちを少し紛らわすことができたのではないかと思います。ダンボとシャンティを愛してくださった皆さん、ありがとうございました。

 そして長年動物園のスターを務めてくれたシャンティ、ありがとう。ゆっくり休んでね。

(横山 卓志)

※今号の『あらかると』では予定を変更し、「シャンティ追悼号」と題して、ゾウ班の6名が思いをつづりました。 

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