でっきぶらし(News Paper)

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31号(1983年01月)3ページ

第16回動物園教育研究会に参加して

(八木智子)
昨年12月8日、京都市動物園において、第16回動物園教育研究会が開催され、当園から小島、後藤、増田、八木飼育課員が参加した。参加者は95名と、京都市動物園内にある会場の視聴覚室は満員の盛況であった。所属別にみると、動物園が19園、ボランティア及び友の会が6団体、大学が3校、小学校が1校、その他が4団体であった。
話題提供という形でまず、大分県にあるマリーンパレスより学芸部の活動状況について高田浩二氏がスライドを用いて発表した。マリーンパレスでは移動水族館を、春と秋におこなっている。約20種類800点ほどの魚や貝、水槽、海水などを車に積み、山村の小学校や公民館に展示して行なう催しで、勉強に役立ちとても好評だそうです。また春の毎週土曜日には近くの海岸にテントをはり、遊びにきている人達に磯の生物について説明したり、質問をきく企画を行なっている。夏には、小学生3・4年及び5・6年生を対象にサマースクールを開校し、貝やヒトデにさわったり、餌をつくったり、採食状況を観察させている。発表をきいて館外への教育活動を、学芸部2名という中でたいへん積極的に行なっていると感じた。
次に、東海大学海洋科学博物館の西源二郎氏が、館内のガイドについて発表した。ガイドには、受付事務を行なっている女性4名があたっている。やり方は、館内放送を使い、平日は1日3回、日曜祝日には5回行なうことにしたが、兼務のため行楽シーズンは、どうしても実施回数が減ってしまうそうです。内容は、(1)博物館の使命(2)展示物の意味(3)魚の形態と名称(4)展示している魚の名前と特?(5)生態(6)魚の子の育て方(7)どこから採取してくるのか(8)海洋水槽のシステムと維持方法などである。水族館で今まで行われているガイドは、ほとんどがショー向けのものであったが、このように魚そのものの生態について解説を聞けるという企画は、水族館、博物館をより向上させる手法として適切であると思う。
続いて、京都市動物園の前田一夫氏が、昭和57年にオープンした動物図書館の利用状況について発表した。現在3300冊の蔵書があるが、利用度はまだ少なく、入っても大部分の人が、ながめるだけで終わってしまっているとのことであった。
次に、同じく京都市動物園の小島一介氏が「動物にかかわる文化遺産と動物園について」発表した。野生動物が、動物園の展示の中に遊離して存在するのではなく、地域の自然やその地域で活動する人間社会とのかかわりの中で、とらえることができるように動物園を運営、展示しなければならない。その一つとして動物にかかわる文化遺産がある。たとえばタカ狩り、メジロのなきあわせ、捕獲道具といったものを展示したり、企画したらどうだろうか?また自然保護の住民運動の育成をはかったらどうだろうか?この提起は、いろいろ問題を含んでおり、簡単に結論を出すことは困難であると私には思えた。
次に、京都市動物園のボランティアの大頭肇氏より「京都市動物園のボランティア活動」について発表があった。現在は41名おり、大部分が学生、保母で構成されている。活動は毎日曜日、来園者に対し「おとぎの国」でウサギを抱かせたり、ペレットを配ってヤギやヒツジに餌をやる指導を行っている。昨年の8月20日、21日には、小学生を対象に、油ねんどを使って動物の足型をとった。おとぎの国で最も人気のあったのはウサギ。つづいてモルモット、ヤギ、アヒルの順であった。京都の場合もそうであるが、この集まりに参加して活動をおこなっているその殆どは学生達で、熱心な人は毎日動物園に来ているという。日本平動物園の場合、近くに静岡大学、静岡女子大、薬科大、英和短大などの大学があり学生も多いが、このようなボランティア活動の芽はまだでていない。はやくでてきてほしいものである。
午後からは、広島の温品小学校の先生から「安佐動物公園の教材開発と教材化」という題で発表があった。安佐動物公園では、教材として可能性があるとみきわめたうえで、スタートした。まず市民の願いがあり、どこへ、だれが、どんなに、どんなものを、といった構成で話をすすめ、班別に子供達で討論させた。ひとつの資料をもとに、一人一人の児童が考えて、より高度な理解を深め、より心豊かな創造的人間に発展していくことを願っているとのことだった。小学校の社会科の教材として、動物園をとりあげ、学んでいくという動物園のひとつの新しい利用のしかたを知ることができ、良かったと思った。
続いて、「国際動物園教育者協議会」について、埼玉県こども動物自然公園々長の遠藤悟朗氏、栗林公園動物園の香川洋二氏が発表した。これは、1971年にイギリスで初めて開催され、今回は7ヶ国33名参加した。12題発表され、教育活動、教材などについてであった。
以上が発表である。
発表のあと、会曹?きめ、次回は昭和58年7月7日〜8日に、白山自然保護センターで行なうことをきめ、閉会した。
私は、この会に5〜6年前に2度ほど参加したことがあるが、前の時より盛況で、しっかりしたものとなっていることを感じた。

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