31号(1983年02月)5ページ
デージーただ今妊娠中
(小野田祐典)
チンパンジーのデージーが妊娠中です。
デージーは、昭和46年9月6日に多摩動物公園で生まれ、11才になります。
普通チンパンジーのメスは、8才ぐらいで初潮がきて大人の仲間入りをするのですが、デージーの場合には遅く、生後9才8ヶ月の56年5月7日に見る事ができました。(パンジーは7才4ヶ月)初潮が遅いわりには妊娠が早く、初潮から妊娠までに3ヶ月でした。(パンジーは1年3ヶ月、平均では2年7ヶ月)この時には、残念な事に昨年1月4日に流産してしまいました。流産の子は、5ヶ月目でしたが、それにしては小さく発育不良のようでした。
また、これ以前の55年11月12日にもう1頭のパンジーが自然で育てていましたが、カゼをこじらせ急性肺炎で死亡してしまいました。まだ当園では1頭もチンパンジーは育っていません。
デージーは、流産した後も順調に生理、発情がみられ、5月25日〜28日の生理を最後にない事から“妊娠したな”と思っていましたが、8月23日に尿検査をしたところプラスとなり、妊娠が確定的となりました。今度こそ流産させないよう気をつけ、1日おきにスキムミルクを250cc与えたりもしました。
動物の妊娠期間は、種類によってまったくさまざまであります。アフリカゾウのように650日のものから、ネズミのように20日ぐらいで出産するものもあります。人間に一番近い大型類人猿(ゴリラ、チンパンジー、オランウータン)は220日〜260日ぐらいで、人間と比べると少し短いのです。
多摩動物公園では、これまで多くのチンパンジーが生まれ育っていますが、個体差、その時の状態から一定していなく、210日から265日で、平均してみると245日です。当園のパンジーの場合は、247日で生まれました。今回のデージーははたして何日目で生まれてくるのか楽しみです。
最終生理日5月28日から数えて240日目の58年1月23日を出産予定日とし、1月17日より他のチンパンジーと分け、寝室に収容し、出産を待つことにしました。17日より、飼育課員が交代で勤務時間外に3回(7時〜8時、21時〜22時、0時〜1時)出産観察をし、万全を期しています。デージーも寝室に収容され最初のうちは不安がり、仲間のチンパンジーを呼んだり、落ち着きがなかったのですが、妊娠末期で体も重たいので、麻袋に入って寝ている時間が多くなってきました。
1月19日ごろより、食欲がだいぶ落ちて残餌も多くなってきました。このため朝夕、スキムミルクを与えることにしましたが、240日目の1月23日になってもまだ生まれる気配はありません。1日、2日と過ぎていくと、飼育課員の仲間から“今日はどうだ”“生まれる兆候はないか”などと聞かれ、私も確証はあるものの不安になり、何回となく出産予定日の計算をしなおしたりもしました。
お腹もだいぶ大きくなり目立ってきて、いつ生まれてもおかしくない状態ですが、248日目の1月31日になってもまだうまれそうにもありません。
来月の”でっきぶらし”には、きっと“チンパンジー出産”を紹介できとると思います。