でっきぶらし(News Paper)

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87号(1992年05月)3ページ

一九九二年 春の話題を追って【アカテタマリンの出産】

 南アメリカに棲息する小さなサルの中で、どの園ででも割合によく繁殖しているのが、コモンマーモセットとアカテタマリンです。私の担当動物でもあることから、話題にするにはちょっと気が引けますが、どうしても語りたい動物のひとつです。
 と言うのは、問題を起こしつつも動物園の課題である世代交替がうまくいったケースのひとつだからです。メスは辛い過去を引きずって当園の養女に。オスは今は亡きメスが最後に育てた個体です。
 いわくありげな書き方をしますが、サルはよく闘争をする動物。オス同士がメスを奪い合い、オスとメスの間の相性が悪くて、親と子の力が並んできてなどで引き起こすのですが、対処を誤れば死に至らしめてしまうケースもあるぐらいです。
 のんびり仲よく子の面倒を見合っているオスとメス、実に平和で暖かい光景ですが、その子が生まれる三週間ぐらい前、オスは兄弟間ですさまじい闘争を起こしました。今、子をおぶっているオスは勝つには勝ったものの、唇はめくれ、のど元にもかなりの傷を負い、更に睾丸の皮がべろっとめくれて赤くなっていて、一見すると負けたように思えたぐらいでした。
 メスは逆。他園で同じく姉妹間で大喧嘩をやらかして敗れ、一年間病院暮らしを余儀なくされてから当園に貰われてきたのです。しかもその影響でしょう。オスと同居させた直後の一ヶ月程は怯えがひどく、下痢と嘔吐を繰り返していました。
 昨年の十月の時は死産に終わって残念に思ったものの、考えて見れば体力はまだ充分についていなかったのです。今回へ期待を抱かせる、大きな布石だったのです。
 末っ子は育児が下手、このサル類にやや見られる傾向です。先のコモンマーモセットのオスは見事?に証明しました。しかし、アカテタマリンのオスは、そんなのは偏見だと言わんばかりのよい面倒の身ぶりです。来年も再来年も楽しい育児光景が見られ、しばらくは平和なひと時であるでしょう。

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