でっきぶらし(News Paper)

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87号(1992年05月)5ページ

一九九二年 春の話題を追って【ホンシュウシカの出産】

 春はカメラ意欲を湧き立てます。数は前より少なくなったと言っても、あちこちで新しい生命が産声を上げているのです。放っておくなんて、もったいなくて…。
 動物病院も時々覗いておかねば、シャッターチャンスを失いかねません。驚くような動物が保護されていることもあるし、それに人工哺育の赤ちゃんはたいていここで育てられているのですから。
 そのような気持ちで、ひょっこり病院を覗いた時に電話です。たまたま獣医は不在で「今、お客様から連絡があって、シカが生まれているとのことですのでよろしくお願いします」との内容の通達でした。
 ヤジ馬を自認する私、この情報を放っておく手はありません。シカの出産自体はおかしくも珍しくもなく、ましてやそのままにしておいても、親がしっかり面倒を見るので何の心配もいりません。
 しかし、数多くの記録写真を持っていながらも、出産シーン及びその直後の写真となると意外と少ないのです。ホンシュウジカに関しても、ほとんどないのが実際です。
 子はまだ羊液にぬれていました。親はまめにペロペロなめています。目撃されたお客様の話によれば、二時五分に生まれたとのこと。私がシャッターを押したのは二十分ぐらい経過してからでした。
 シカの子が立ち上がるのは早く、三十分も経つとよろよろしながらも何度も起立を試み、四十分も経つと不安定ながら四本の足で何とか唐?張れるになりました。後は、後産がすんなり出るのを待つのみです。
 たかだかシカとは言え、このような出産シーンに出会えたお客様は幸せです。昼日中に生むなんて稀、その稀に出会えたのです。楽しい思い出になることは受け合い。私もお陰様で、いい記録を残せました。

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