137号(2000年09月)4ページ
〜あらかると〜 さよなら ベリー
なんということでありましょう。一年ちょっとの間に五頭もの類人猿たちを見送ることになってしまいました。
ゴリラのトト、チンパンジーのレーナは明るい希望に満ちた旅立ちへの見送りでした。しかい、ゴリラのタイコ、そしてゴロンは、二度と会うことは叶わぬ旅立ちへの見送りでした。
そして、そして、その中に十一月三日に私の担当動物であった、オランウータンのベリーまで含まれてしまいました。一七歳と九か月、まだまだ早過ぎる旅立ちでありました。
一三年ほど前でしょうか、ベリーの担当に決まった時は不安でいっぱいでした。というのは、私の性格からして類人猿にあわないと思っていましたし、類人猿の担当の難しさもそばで見ていて十分過ぎるほど認識していたからです。
不安を解消してくれたのは、前担当者の馴致、調教が行き届いていたことでした。たいした苦労もなく、引き継いでから亡くなるまでを過ごせたと思います。
担当者としての彼女への最後の勤めは、解剖の立会いでした。正月早々の発病以来、二度に渡る死線を乗り越えた病魔との闘いを物語るかのように、体の中はボロボロの状態でした。「これで生きていたのは不思議だ。」との声が思わず出たほどでした。
一度、二度と乗り越えられたものの、三度目はさすがに力尽きてしまったのでしょう。二度も死の淵より戻ってこられたのは、彼女自身の生命力の強さはもちろん、代番者や獣医、前任者、周りのスタッフの陰の力があったればこそと思います。彼女に代わってお礼をいいたいと思います。
十数年の付き合いの中で様々な出来事を経験し勉強させてもらいました。これは大きな財産であり、溢れるほどの楽しい思い出でもあります。本当にありがとう、ベリー。
(池ヶ谷 正志)