137号(2000年09月)5ページ
〜実習生からのお便り〜 【二日間の体験学習を終えて・・・】 静岡農
教員になり10年が立ちました。県のほうより、二日間、社会貢献活動という一環で、養護施設、保育園、病院、動物園などで研修を命じられました。私がすぐにやってみたいと思った場所が日本平動物園でした。私は幼稚園の頃より、度々ここへ来た思い出があります。そして、今でも年に2〜3回は子供を連れて見学をさせていただいています。動物を見ながら記念撮影をしたり、食堂でお昼ごはんを食べたり、遊園地で遊んだりとても楽しく遊べる場所です。私にとっては、日本平動物園はとても愛着を感じる場所なのです。こんなことから体験学習を希望させていただきました。
実習をお願いするに当たり、初めてお会いしていただいた方が、大村飼育課長でした。課長というお役職の方に身近にお話をして頂き、快く引き受けていただいたこはとてもうれしかったです。話の中でどのようなことをやりたいのか、何の動物を担当したいのか聞かれました。心の中では大きな動物を担当してみたいなー、しかし、恐い動物に当たったらどうしようかな−と迷いながら、大村課長が私の適材適所へきっと導いていただけると思いました。
当日、動物園へ来てみると類人猿舎の方へ案内されました。ここで私のご指導を頂いた方が、小野田さんでした。この場所は、この1年でいろんな出来事があった場所でした。昨年7月には、子供のころから動物園にいたトトとのお別れ、そしてタイコが来園、今年3月にはタイコが逝ってしまう。7月にはゴロンが逝ってしまう。こんなことを知らされとても淋しい思いがしました。世界中のゴリラが減ってきている。日本のゴリラも33頭になってしまった。数?、ゴリラの赤ちゃんが誕生してゴリラの数を増やして欲しいと強く願いたいです。
さて研修ではどんな体験ができるのかとても不安でした。小野田さんについて回り作業のご指導を頂きましたが、仕事の流れをすぐに覚えるのはとても難しかったです。動物舎の掃除は なんとかできても、それ以外の動物の餌の準備はとても覚えられませんでした。どの動物にどれくらいの分量の餌を与えるのか、どのフルーツを何個入れるのか、どの野菜をどのような形で切りどのように分けて入れるのか、とても注意をしていなければ間違えてしまいます。また、リンゴには必ず塩をぬることを知りました。朝の動物の観察、動物の一頭一頭への愛情のこもった声かけ、そして朝の糞のチェック、観察、どの餌をどれくらい残しているのかの調査、普通の人では簡単に出来ることではないとわかりました。また、チンパンジーのミルクの温度加減の調整、病気がちなオランウータンのベリーへの薬の調整、毎日の心配りはとてもたいへんなものだと思います。しかも、動物それぞれの様子、健康状態、気質、性質が小野田さんにはわかっていました。私は動物の恐さも教えてもらいました。チンパンジーのところへ油断して手をやったりすると噛ちぎられてしまう、オランウータンはづるづると引っ張られ絶対に離さない、ゴリラは深く強く握られたらたいへんな大怪我をしてしまう。どの動物も油断をしてしまうとたいへんな事故につながってしまうことを教えてもらいました。実習中にこんなこともありました。赤ちゃんチンパンジーのレーナが握手を求めてきました。私は気軽に手を差し伸べ握手をしました。とてもうれしかったです。しかし、だんだん私の手を口元に持っていったのです。そしたら噛まれてしまいました。ちょっと痛かったです。また、大きなチンパンジーにはとても恐くて近付くことができませんでした。ちょっと離れたところにいても、つばをかけられたり、水をかけられたのには驚きました。変な奴が来たと嫌われたのかなーと思いました。
それからチンパンジーの檻の中にある「蟻塚」というものを教えてもらいました。いったいなんだろうと思いました。小野田さんがその中に、オレンジジュースとリンゴジュースを入れてふたをしました。山のようになった「蟻塚」には直径2センチくらいの穴がいくつか開いていました。そして、細い木の枝を何本か採ってきてチンパンジーに渡しました。そうしたら、1頭のチンパンジーがその枝を穴に差し込み、その枝を取り出して先の方を舐めていました。そのうち、チンパンジーがみんな寄り集まり同じ事をやっていました。中に入っているジュースを枝を使って舐めていたのです。頭を使ってくると、枝の先を筆先のように細かく噛み砕き、ジュースをたくさん吸い上げる知恵がついてくる様です。2リットルあったジュースが全部枝の先で吸い上げられたことにはたいへん驚きました。動物は人間を見るようです。小野田さんの言うことは絶対に聞いていました。動物の頭の良さ、知恵がついてくるということにはとても感動しました。
この二日間、あっという間の研修でしたが、たくさんのことを教えて頂きました。その動物に合った接し方をしなければならない、充分な観察とその動物の心を理解してやらなければならない。そして、やはり長年の経験が一番必要であることがわかりました。この二日間では絶対に理解できないことです。飼育課長の大村さんをはじめいろいろな方々にお世話になりました。そして何よりも身近に接して頂きご指導を頂いた小野田さん本当にありがとうございました。たいへん良い経験と体験をさせていただきありがとうございました。