137号(2000年09月)9ページ
〜友の会コーナー〜 【第41回日本動物園水族館教育研究会に参加して
近年新聞紙上では「IT」の文字が踊っており、実際に一般家庭でもすごい勢いで浸透しつつあります。今回の研究会では、昨年までとは様相ががらっと変わり、発表方法のみならず内容にまで「IT」の波を感じずには居られませんでした。また場所が福岡であるにもかかわらず、参加者が北海道の方々も含め総勢80名ほど集まり、当日地元のニュースで報じられるなど、多くの方々の関心の高さを伺えました。
その研究会での最初の発表が、「ハイブリッド水族館」。発表者は三菱総合研究所の方で、そういった外部の方が多いことも今回の特窒ナした。内容は、現場へ何気なく行ってただ何となく見てしまうよりも、あらかじめパソコンを使って情報を得ておき、現地では貸し出しの携帯端末を使って解説などを受け、それらに利用者IDを入力しておけば帰ってから自分の観察履歴から効果的に復習できるというものです。ホームページをここまで活用できるんだという今後の可能性を示してくれました。 そんなネットワークを使って、様々な園館と学校の授業とを直接つなげようというのがNTT西日本の方の「社会教育施設と学校を結んだ遠隔学習の工夫」でした。最近では学校教育に環境教育を取り入れるようになり、なかなか教科書だけで学べるものではありません。そこで、ISDN回線とテレビ会議システム(見たところ受話器のない大きなテレビ電話)で授業の中で園館の人とリアルタイムにお話が出来るというわけです。
そしてそのシステムを実際に使い、その報告を発表なさった小学校の先生がいました。福岡市立の小学校で、「マリンワールド海の中道」と結び、かなり事前に水族館の方々の協力を得て実現したそうです。そのためか子ども達の関心も想像以上に高く、何より直接話が出来ることで説得力があり、そのことが刺激になってその後様々な環境問題について自分達自ら問題提起していくきっかけになったそうです。
これらを利用することでより詳しく学べるだけでなく、自ら参加できることによってその他様々なことについても更に意欲が増していく、そういった学習意欲を高めていく1つの手法になっていって欲しい、そのような意気込みが彼ら発表者に感じられました。 その一方で、テレビやパソコンを通さない環境教育の体験型のプログラムを、様々模索している方々の発表もありました。
その1つに、今年5月に行われた日本環境教育学会でワークショップを企画し、その報告を発表したものがあります。 そこで行われたゲームは、「カモシカゲーム」でした。ニホンカモシカの数の増減を通して、日本の里山のこれまでと今後どうあるべきかを、子ども達に遊びながらにしてしぜんと考えてもらえるようなシステムになっています。紙芝居のように話を進めていきながら、その時々のルールにのっとって陣取り合戦のようなことをすると、人間の都合により今までの歴史の通りカモシカが増えたり減ったりします。
このように、今回の研究会はまさに世紀末にふさわしい、今後の21世紀に向けての夢あふれる発表が多くありました。手法は様々でしたが、共通して言えることは、情報は与えるばかりでなくいかに実感してもらえるか、ではないかと思います。情報社会といえる昨今、私たちボランティアも押しつけがましい情報の与え方にならないよう、今後常にガイドのあり方を模索し続けていかなければならないと思いました。