でっきぶらし(News Paper)

一覧へ戻る

« 112号の4ページへ112号の6ページへ »

112号(1996年07月)5ページ

動物を知る(?T)ゴリラをゴリラらしくする為には・・・

 上野動物園でゴリラの森が完成したのは多くの方がご存知でしょう。ゴリラをよりゴリラらしく飼育し、繁殖に導こうというのが主たる理由です。何年か後に朗報が聞けるのを多くの方々が待ち焦がれているでしょう。
 先にも述べましたが、ゴリラは本来一夫多妻の生き物です。日本の動物園の多くが一夫一妻で飼育していますが、決して望ましいことではありません。どうしても、繁殖の確率が低くなってしまいます。
 そこには、“男と女の対等の関係”という問題が潜んでいます。ゴリラを見ていただければすぐに分かると思いますが、体格に相当の差があります。メスは、オスの半分くらいしかありません。
 2年ほど前、上野動物園でイギリス・ハウレッツ動物園のピーター・ハリディ氏の講演があって、「ゴリラのオスとメスを対等の関係にするためには、最低1対3で飼育する必要がある。対等の関係になることによって、メスがメスを出し抜いてオスに近づこうとし、それが繁殖のきっかけになる。」旨のことなど、ゴリラを飼う基本的な心得が述べられました。
 それでも、当園の例を見るかぎり、オスのゴロンとメスのトトとは、対等であるかはともかく、そんなに悪い関係には見えません。トトがけっこうゴロンに“誘い”をかけているとも聞いています。
 1対1の飼育でも繁殖例はそこそこあり、かつオスとメスの仲がよければ、本来の飼育でなくとも繁殖の期待はもてなくはありません。が、ここにももうひとつ困った問題、近親化があるのです。幼いうちからずっと一緒に飼ってしまうと兄妹化して、互いが性の対象として捉えられなくなってしまうのです。
 ゴロンがトトの誘惑に応えないのは、多分にその辺に理由があるのかもしれません。チンパンジーでも生じない、オランウータンでは全く問題にならないのが、ゴリラでは・・・。神経が繊細といわれるゆえんでしょう。 
 私自身、代番でながらゴロン、トトとは8年あまり付き合いました。ナンバー2の地位をなんとか確立して、それなりに楽しい付き合いができました。しかしながら、彼らの奥深いところを見つめていなかったような気がしてなりません。

 

« 112号の4ページへ112号の6ページへ »

一覧へ戻る

ページの先頭へ