でっきぶらし(News Paper)

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170号(2006年06月)7ページ

病院だより  ヤギのお母さん それぞれの出産

今年もまた新年度が始まりましたね。学校や職場で新しい出会いが皆さんにもあったことでしょう。子供動物園のヤギ舎では、この春3頭のメスが出産を控えていました。お母さんたちの名前は、キャロル、チュラ、チャチャ。前飼育担当者が形見がわりに力を入れて繁殖させてくれたので、無事の出産と待望の赤ちゃん誕生を心待ちにしていました。

 最初に出産したのはキャロルでした。彼女は過去出産途中に気絶してしまったことがあるので、難産にならないといいな・・・と思っていました。予定日より4日過ぎた日の午後、「出産が始まったよ」との連絡が。病院から急いで子供動物園に行くと、その間ものの10分もたたないうちにもう生まれていました。「ああ、良かった〜!」お母さんのキャロルも子供も元気です。その後もう1頭出産し、かわいいオスとメスの双子が誕生しました。普段、動物の診療をしていると、残念ながら死亡させてしまう場合もあり、意気消沈することが多いです。「新しい命の誕生ってこんなに喜ばしいんだなあ」、動物園で働いていてひとしおに実感するようになりました。しかし、喜びもあれば悲しみもあり・・・。

 次に出産したチュラは、まだ体の小さなメスでした。過去に一度出産し無事子育てした経験があったので、今回も無事であるようにと祈っていました。チュラは無事出産!と思いきや、子供と一緒に子宮(体内で子供が育つ臓器)が外に出てきてしまい、大変なことになってしまいました。赤ちゃんはメーメーないていますが、お母さんの側に連れていき乳首に顔を近づけても飲もうとしません。しかも、お母さんのチュラは自分で立つこともできません。出てきた子宮を体内に戻し、入口の皮膚を縫い合わせて再び外に出てくるのを防ごうと試みました。が、強い腹圧で翌日に再び子宮が外に出てしまい、出ては押し込むを繰り返しましたが、状態は芳しくなく、悲しいことに出産2日後、忘れ形見の子供を残したまま、チュラは亡くなってしまいました。飼育係が育てることになった子供も弱く、お母さんの後を追うようにして亡くなり、大きなショックでした。

 チュラの分も無事出産してほしい!そう思っていた、今度はチャチャの番です。出産予定日より早くに陣痛がきて生まれそうだったのですが、何度いきんでも生まれませんでした。翌日からチャチャはケロッとして元気に餌を食べていました。そのまま予定日を過ぎても出産の兆候が見られず、さらには聴診器で聞こえていた子供の心音もわからなくなりました。もしかすると子供が中で死んでいるのかも・・・。レントゲンを撮ると、子供が1頭確認できたので、帝王切開をして取り出すことにしました。しかし、子供は顔面が変形しており、どうやら中で体の位置がおかしくなり出れずにいたようで、残念なことにすでに亡くなっていました。チャチャは手術にも耐え元気になりましたが、子供を助けてあげられなかったことが悔やまれてなりませんでした。

 キャロルの双子の子供は公募で「キキ」と「ララ」というかわいい名前をつけていただき、元気に群れの中で皆と暮らしています。亡くなったチュラと子供達の分も元気に育ってほしいです。動物とふれあえる子供動物園に是非足を運んでみてくださいね。(野村 愛)

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