でっきぶらし(News Paper)

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68号(1989年03月)5ページ

動物病院だより

 行楽には絶好の季節となってきましたが、皆さんはどこかにでかける予定をたてていますか?動物園も幼稚園や小中学校の遠足、また家族連れの皆さんでとてもにぎやかです。
 この季節は動物にとっても赤ちゃん誕生にわく時期でもあります。まずは三月三日、チンパンジーのパンジーに待望の赤ちゃんが生まれました。パンジーは一九八〇年十一月十二日に一頭出産したのですが、四ヶ月後、類人猿舎全体にカゼが流行し、子供にもうつってしまい、三月二十六日その子は、肺炎で死んでしまったのです。
 その後、パンジーは発情がきても、ポコとけんかばかり、私達は、半ばパンジーの出産はあきらめていたのです。
 そして約八年後の一九八八年九月四日、発情がきていないからひょっとしての思いで、尿検査をしてみると妊娠反応陽性という結果がでたのです。
 「できれば、三月三日の女の子、名前はえーと”桃子”がいいよ。」なんて勝手なことを言いつつ、パンジーの様子を見ていました。
 そして三月一日より夜間観察を始め、三月三日午後三時三十分に夕食を与えたところ、いつも通り食べ、四時十分頃、ヨーグルトを与えようと近づいていくと、なんだかお腹のあたりにヒモが見える。あれ、なんともうしっかり子供を抱いていたのです。
 臍帯をきらないので、担当の小野田飼育課員が、パンジーの寝室に入り、切り、性別を調べると私達の願い通り、メスでした。結局、名前は、「ピーチ」とすることにしました。前回うまくいきませんでしたから、今度こそ母親の元で大きくなってもらいたいものだと思っています。
 その他、三月中にはメンヨウ、フンボルトペンギン、アクシスジカ、ヤギ等が生まれ、四月には、クロミミマーモセット(残念ながら翌日死亡)、アカテタマリン、ピグミーマーモセット、エリマキキツネザル、プラッザグェノンとサルの仲間が次々誕生しています。
 こうしたおめでたいニュースだけあれば良いのですが、悲しいできごともありました。それは、開園以来飼育していたオランウータンのテツが死亡したことです。テツは、今までに一回カゼをひいたぐらいで病気らしい病気をしたことのない健康優良児だったのです。それが、三月五日の夕方、いつものように見回りをして類人猿舎にいくと、聞きなれないなき声がしていました。ライオンがないているような妙な声で、なんだろうと、テツの寝室をのぞいてみると、台の上に仰むけになり、流涎をだしながら、うなっていたのです。ものの五分もしないうちに息をひきとってしまいました。あっという間のでき事、剖検の結果は急性心不全でした。
                                           (八木 智子)

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