でっきぶらし(News Paper)

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51号(1986年05月)20ページ

動物の食べ物第四回◎オグロワラビー(有袋目・カンガルー科)

あれっ、草にしてはどうもおかしいな!!とよく見れば、オグロワラビーがカマキリをつかまえムシャムシャ、おいしそうに食べているのです。長年、彼らを見つめてきて、こんな光景に出会ったのは一度ぽっきり。でも、間違えて食べたのなら、途中ではき出しそうなものなのに、そんな様子は全くありませんでした。
草食獣だから草や木の葉しか食べないとは、あまりにも固定観念での物の見方だと、ずいぶん前にも述べました。事実、この仕事にたずさわって見聞を広めてゆくと、“固定観念”を揺さぶられる事態に遭遇することはしばしばです。
ある日、動物番組を見ていると、キリンが骨を一生懸命しゃぶっていました。実はキリンではありませんが、これと同じような光景に出会ったことがあります。
アクシスジカが何かを口の中に含み、カラカラ、コロコロ音を立てていたのでよく見ると、白っぽいものをしゃぶったり噛んだりしていたのです。
最初は石コロかとも思ったのですが、餌を与えた後、何かをしゃぶっていた現場へゆくと、落ちていたのは落角して何処へいったか分からなかった若雄の小さな角でした。体が何か、ミネラル等を欲してしゃぶったのかどうかは分かりませんが、一考を要する出来事ではないでしょうか。
更に草食獣が昆虫が食べるのも、そんなに珍しいことではありません。何かの折りに、読んだり聞いたりする話ではあります。
話が横道にそれてしまいました。オグロワラビーは、有袋類。オーストラリアの湿地帯に棲む小型のカンガルーと思って頂ければよいでしょう。もちろん草や木の葉を主食にしている動物です。だからこそ、虫を食べたり脱線する話題が浮かんできたのです。
湿地帯、それも低木林地帯だと図鑑には説明してありますから、食性の好みとしては草の葉より木の葉では、との思いを大いに抱かせます。実際、代用食の根菜類(サツマイモ、ニンジン、キャベツ、リンゴ、パン)はともかく、プラスして“何か”を与える時、改めて前記のことを思い起こさせます。
青草は与え過ぎるとすぐに残すのですが、木の葉、ヤナギやニセアカシアだと多少多くても食べ切ってしまうどころか、木の皮までをも食べてしまうのです。かつて、食べては体にあまりよくない木の皮なのに、防護柵が破れていた為にムキになって食べてしまって、ひどい軟便になってしまったことがありました。
木の葉、樹皮に対する嗜好性は並々ならぬもの。このオグロワラビーも、キリン同様に草食獣ではなく、葉食獣だといい変えてもよいぐらいの感じがあります。

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