でっきぶらし(News Paper)

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106号(1995年07月)12ページ

子育て・裏方事情【一頭で育つか、二頭で育つか】

 要は育ち方、育て方、最近ではだんだんそう考えるようになっています。人工哺育で育った場合でも交尾能力を発揮し、育児にも参加しているケースを見れば、苦労もしてみるものだとの気になってきます。
 言葉をかえて、少々クールになっての観点で言うなら、成功と失敗の狭間はなんなのか、何が決定的な違いを招いたかです。キーパーとしてぜひ捕らえておきたい要点です。
 かれこれ五〜六年前になるでしょうか。甲府の遊亀動物園でピグミーマーモセットが生まれ、なおかつオスがしっかり育児に参加しているとの報に、一瞬我が耳を疑いました。
 そのピグミーマーモセットのオスは私達が育てた、つまり人工哺育で育てた個体です。何がいったい効を奏したと思いながら、ひとつピンとくるものがありました。
 たいていは一頭で人工哺育しますが、ピグミーマーモセットの場合は違いました。二頭で育てたのです。物心がつく前から、ヒト以外で触れ合う、遊び相手がいたのです。
 交尾と育児は学習、とよく言われ私もそう言ってきましたが、どうもこの表現はやや的がはずれているような気がします。むしろ乳幼児期の育ち方に大きな問題がある、と言っておいたほうがよいように思えます。
 ピグミーマーモセットに限らず、人工哺育で育ちながら交尾、育児能力を有している個体を見ていると、必ず向かい合って遊べる相手がいます。同じ種でなくてもです。
 つい最近の話ですが、「お宅からきたシシオザルは交尾姿勢とっていますよ」との話を聞き、驚くと共にピンとくるものがありました。そう、人工哺育ながらダイアナモンキーと一緒に育っていたのです。
 白浜のアドベンチャーワールドへもらわれていったチンパンジーのジーコ、人工哺育故にもらい手を逸したオランウータンのジュリー、私はこの二頭にも密かな興味を抱いています。互いに向かい合い遊びながら育っている、それがきっかけで交尾能力を有しているのではないかとです。

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