でっきぶらし(News Paper)

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70号(1989年07月)2ページ

一九八九年繁殖動物を追う 松下憲行【フンボルトペンギン ロッキーの

 飼育係の手によって育てられたロッキー、彼はまた当園のフンボルトペンギンの繁殖の第一号でもありました。
以来、十二年四ヶ月。世代はすっかり入れ替わり、彼はいま正に全盛期に入っています。
 でも、ここまですんなりきた訳ではありません。先程述べたように、彼は人の手によって育てられています。ということは、フンボルトペンギンとしての教育を受けないで育った、と考えるべきでしょう。
 何とか群に溶け込み、そして一人前になって結香Aという時にそのつけというか、人工哺育故の愚かさを露呈しました。
 初端に飛び交ったドジニュースは、交尾が上手にできないということ。それをどうにかクリアーしたと思ったら、今度は卵の押しつぶしです。
何のことはない、卵とコミュニケーションが図れず、ふ化寸前でもお構いなしに抱卵。死ごもりのような形で圧死させてしまう、大ドシをやらかしたのです。
 えらいというか、バイタリティーに溢れているというか、感心するのはめげずに次から次へとチャレンジしていったことです。ペンギン池はどちらかといわなくてもいいぐらい、花嫁不足のところ。なのに、彼は私の知る限りでも二度妻を取り替えています。
 結果、とうとう彼は父親になりました。当園三代目の誕生でもあります。更に、彼はそれに満足することなく、ひなを巣立ちさせると休む間もなく、次の巣作りに入りました。が、さすがにこれは成功しませんでした。
 今年のフンボルトペンギンの繁殖は、従来にない賑やかさです。その中には、私が唯一繁殖に導くことができた個体も仲間入りしていました。
 でも、何たってロッキー。私が育てた訳ではないものの、妙に気になる面白い奴。今後もいい父親である続けるでしょう。

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