でっきぶらし(News Paper)

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47号(1985年10月)7ページ

良母愚母 第8回 ◎ロバ(再度の期待もオスが老いて)

 ロバといえば、頑固者のイメージがついて回ります。それでも憎めないのは、粗食に耐え、懸命に働く姿があるからでしょう。人との長年の付き合いに、サボる駆け引き等も心得ているようです。
 当園のマコ(オス)も、ちょっぴりそんなかけらを見せたことがありました。かつて、幼児動物教室の花形だったのですが、寄る年波にだんだん衰えを見せ始めた頃のこと。鞍をつけて幼児達を一周させる乗り場まで連れてゆくまではよいものの、数人乗っけただけで、いかにも疲れた感じの表情を見せたそうです。かわいそうに思い、解放してやると、とたんにピンシャン、担当者をもあきれ返させました。
 このマコも、ある意味では不遇でした。お嫁さんがなかなかみつからなかったのです。来ても、体格の全く違うアフリカ産のでっかいロバ。内心どうだったでしょう。意外と気にしていなかったかもしれませんが・・・。
 マコの体格にあったお嫁さんが来たのは、かなり歳月が経ってからだと思います。アジア産ならアジア産同士。ようやくバランスが取れ、落ち着いた感じになりました。
 そうして産まれた赤ん坊、いや世辞抜きで可愛いですね。草食動物はたいてい産まれて1時間もすると歩き出すだけに、力強さが加わって可愛らしさは半減するものです。が、ロバの場合は親にないふさふさした長い体毛が、非常に赤ちゃんらしさを誘ってくれます。
 驚いたのは、担当者が子に何をしても母親が怒らなかったこと。確かに担当者は草食獣が好きで、彼らを安心させる何かを持っていました。それにしても、相手が野生の動物ではそうは簡単にいきません。人と家畜の持つ歴史の重さを感じずにはいられませんでした。
 それも昔日の夢。マコが子を産ませたのは、それっきりです。すっかり年老いて、そんな元気を全く失ってしまっています。

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