でっきぶらし(News Paper)

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129号(1999年05月)6ページ

あらかると 「貫き通した選択の自由」

*ブラッザグエノン(オナガザルの仲間)の繁殖計画で、王子動物園より借り受けた1993年9月23日生まれのオスと、従来から飼育中のメスたちとの同居対策編*
 
 以前から飼育していたNO5と称するオスとその家族たち、メスはNO2。繁殖も順調にすすみ良き母親で13回の出産を記録し、家族に包まれ、それは平穏な日々を過ごしていましたが、1997年オス親が突然他界しました。オス親が死んだときの家族構成は、母親と娘2頭と息子1頭でした。
 そこで繁殖計画を進めるために息子を他園に放出し、新しくブリーディングローンでオスを借り受けたのは、1998年5月のことでした。このオスは、NO19と称されました。平穏な日々を期待しての同居が、早々にトラブル発生で途端に不穏な日々に。
 婿殿が先住の家族による攻撃で傷を負い入院、その後試行錯誤を繰り返し、いろいろな事を試みては傷を負い、入退院を繰り返しました。
 観察しての推測で、歯の抜けたおばあちゃん(NO2)が娘2頭に指示を出し、婿いじめをしている様子でした。
 そこで1番の攻撃隊長である気の強い方の娘を他園に放出することにしました。困ったのは歯の抜けたおばあちゃん母親をどうするかです。どこの園も貰い手はありません。老い、朽ち果てるまで動物病院の狭い一室で過ごさなければなりません。
 しつこく再度の同居を試みました。同居して23日目の昼、運動場が血に染まる程の傷を負ってしまったのです。深い傷を負ったのは歯の抜けたおばあちゃん母親、婿殿もいつまでもだまっているはずはなく、その姿は一回り大きく見えました。
 今度の入院患者は老いた母親です。前の亭主が忘れられないのか、自らの意志を貫くほど婿殿が嫌いだったのか、順応性に欠けているのか不明ですが、現在、動物病院の一室で傷の痛みと戦ってひっそり暮らしています。そして同居は断念しました。
 現在、中型サル舎にいるのは娘と婿です。この2頭は、末永く仲睦まじく暮らしてもらいたいものです。

 追伸・・・なんと6月3日にこの2頭の間で赤ちゃんが産まれ、娘もしっかりと母親業をこなしています。これを思えば、妙に納得。
(川村敏朗)

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