でっきぶらし(News Paper)

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125号(1998年09月)5ページ

あらかると 「アメリカバイソンの死」

 去る10月11日アメリカバイソンのメリーが約26年の生涯を閉じました。 
 一口に26年といっても、それを長いと思うか短いと思うかは人それぞれでしょうが、バイソン、つまり野牛にとってそれは途方もなく長い時間に相当します。
 人間に換算して100年以上にもなる26年は、彼女にとってどんな時間だったのでしょうか?もちろんメリーに時間の概念があったかどうかは判りません。しかし、非常に頭が良く、特にプライドの塊とでも表現したくなるあの精神性の高さは、嫌でも彼女を人間的に見たくなる程でしたから、あるいはそうした感覚を宿していてもおかしくはないな、と私は思います。
 20年弱といわれるバイソンの限界寿命を大きく飛び越えて生きていたメリーも、やはり時間の重圧には耐えられず、老衰による足腰の弱体化によって、ある日ついに立ち上がることが出来なくなり、その翌日ひっそりと死んでいきました。
 本来、人間に慣れにくい動物であるバイソンの中でも極めてプライド高く、そのためか、私たち人間に対して孤高を保っていた彼女を、正直私あまり好きではありませんでしたが・・・更に、動物に対して常に一定の距離を置くようにしている私を、おそらく彼女の方も好きではなかったでしょうが、それでも、あの強烈な存在感のある精神の持ち主を、私は実は、実は高く評価していました。
 だからこそ、メリーの最期に対して、私はこの言葉を捧げたいと思います。
―おまえは、本当に大した奴だった―
 これが、私が彼女にできる最高の賛美です。
(長谷川裕)

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