でっきぶらし(News Paper)

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125号(1998年09月)6ページ

あらかると 「オランウータン ベリーの異変」

 今年の夏、オランウータンのベリー(メス)の突然の体調不良に振りまわされました。朝、いつものように体温測定の為に入室しようとしても、扉のところで仰向けに寝ていて扉を開けることができなかったのが、コトの始まりです。
 かぎを開けると台上に移動するのが通常なのにぴくりとも動かず、無理矢理扉を押し開け中に入ると、目はうつろで何か様子が変です。
 それでもなんとか台上へと移動させたものの、自分の体を支えることができません。はいずるようにしてやっと台上に行ける状態でした。
 体を起こすこともできないので、仕方なく寝かせたまま体温測定をすると、34.8℃とあまりにも低い体温です。手足の指先には熱気は感じられずひんやりとしていました。
 ヒトでいうところの低血圧のような症状、とりあえず体を動かす力になるものをとホットミルクを飲ませようとしましたが、全く飲む気を示しません。薬の味をごまかして飲ませるようにととってあったイチゴヨーグルトを与えたみたところ、それをなんとか飲んでくれました。
 それから4日程は、果物、お菓子、ジュース類と、手をかえ品をかえて与える日々が続きました。というのも、日常与えている餌には見向きもせず、いつもは食べていないものなら興味を示して食べてくれる可能性があったからです。
 しかしそれも1回きりです。これを食べたからと次も与えると、全く食べる気を示さず、毎回新しいものを用意しなければなりませんでした。
 そうこうしている内に、日常与えている餌やミルクにも徐々に手をつけるように。そうすると体温、目の上下運動も安定し始めて回復に向かいました。
 結局、なんでそうなりなんで回復しだしたのか、何も結論を出すことはできませんでした。私の乏しいこづかいがあっという間に少なくなった、その事実だけが残りました。
(池ヶ谷正志)

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