でっきぶらし(News Paper)

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114号(1996年11月)5ページ

動物を知る(?V)捕獲◎捕獲してわかる連帯感

 サルは頭のいい動物です。できる限り捕獲するなどの乱暴な行為はやりたくありません。しかしながら、2年、3年と担当していると、どうしても捕獲せざるを得ない問題が生じてきます。怪我、病気などによる治療のため、他園へ放出するためなどの理由からです。
 今から25、6年前の古い話で恐縮ですが、彼らを捕まえることでまず知ったのは連帯感の強さです。ダイアナモンキーのメスを、恐らく怪我をしたので捕らえたと思うのですが、翌日に予期せぬ反応に見舞われました。ダイアナモンキーの部屋の前を通り過ぎようとすると、オスが扉に思いきり体当たりしてきて、扉の格子から手をだして私を引っ張り込もうとするのです。形相は怒りそのもので、犬歯をこれ以上ないくらい大きく見せてです。
 昨日、メスに手出ししたことを根に持っているのが明らかです。「このヤロー、許さねえ」と言っているようでした。
 一度ならず二度、三度そんな目に遭いました。こちらもメスを捕らえた翌日には、できるだけオスには近寄らないようにしましたが、それにしてもメス思いのオスでした。
 種が違ったって、同居していればやはり連帯感は持ちます。咬まれないように捕獲する際に要注意なら、捕獲後に仲間の元に戻す時だって要注意です。
 これも先程と同じ程度の古い話ですが、病弱のシロガオオマキザルのメスの治療を終え、そっと扉を開けて部屋に戻したときです。同居していたジェフロイクモザルのメスは、怒りをじっとこらえていたのでしょう。
 放飼場のいちばん隅にいた筈なのに、ギャオーとあっという間に扉のところまで馳せてきて、私は危うく脚を咬まれそうになりました。ピンと立っていた彼女の尻尾をとっさに持って、ポーンと奥に放り出してことなきを得たのです。
 英名は、スパイダーモンキー。クモは空の雲ではなく8本足の蜘蛛、怒って立ち上がって両手を広げて向かってくる様が蜘蛛そっくりだと言う訳です。私は、身をもって思い知りました。正直な心境、ひざがガクガク震える思いをしたのです。

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