114号(1996年11月)9ページ
あらかると 「若トラが仲間入り」
猛獣は昼間、寝ているのが常です。動いているほうが珍しいくらいです。そんな猛獣舎にひときわ動きのよい若トラのトシ(オス)が仲間入りしました。
そのトラは、東山動物園で平成8年4月13日に生まれたうちの1頭です。昨年の10月21日にブリーディングローン(繁殖のための貸し出し)でやってきました。
来園当初は、親そして兄弟より離れた寂しさと恐怖でおののいていたのでしょう。一週間ほど昼も夜も泣き叫び続け、餌も満足に食べず、人の顔を見れば唸っていました。隣室にいたメスのミナにとっては迷惑このうえなく、睡眠不足が続いたことでしょう。
餌を食べてくれないのは頭痛のタネ、馬肉から鶏頭、鶏肉、うさぎの肉といろいろ与えました。ちょっとしたきっかけからウサギの肉を食べ始め、後はむしゃむしゃ。この悩みはすぐに解消してくれました。
もっとも、満腹の時には鼻をならして?拶行動をしてくれるのはともかく、空腹時はずっと掃除をしている間中唸り続けるのには参りました。時には糞までしてしまう始末でした。
ミナに対しても鼻をならして?拶行動を取りますが、ミナは唸り返すようになっていました。見合いを始めてカウンターの扉を少し開け顔が見えるようにした途端、ミナは前脚ではたこうとする動作すら見せました。
1ヶ月後、同居を試みました。ミナは警戒し、トシは逆に遊びたい一心で近づこうとします。ミナにすれば、孫のような子にまつわりつかれる感じなのかもしれません。
トシが来るまでは、一日中のんびり日なたぼっこをしながら過ごしていました。が、そのペースが崩され、精神的にかなり参ってしまったようです。
とうとう胃かいようになってしまい、薬を投与せざるを得なくなりました。ミナに受け入れてもらえないトシは、ミナに唸られると木片とか石ころでじゃれて遊んでいます。
いつになったら2頭が仲よく暮らせる日がくるのでしょう。少々時間がかかりそうです。
(佐野一成)