でっきぶらし(News Paper)

一覧へ戻る

« 105号の3ページへ105号の5ページへ »

105号(1995年05月)4ページ

出産ふ化 それぞれの事情 「フンボルトペンギン」

(アスペルギルス症を恐れる中で)
 ペンギンといえば、氷の国を想像される方が多かろうと思いますが、間違いと言えないまでも、正しくもありません。南極の極地とその周辺から赤道直下のガラパゴス諸島まで、想像以上に広い地域に分布しているのです。
 さて、当園で飼育しているフンボルトペンギンは、南米のチリ沖を中心に生息しているそうです。それなら暑さに強いのかといえばさほどではなく、彼らが本来生息する海域に流れるフンボルト海流が暖流ではなく寒流であることを唐ワえれば、弱いと考えたほうがよさそうです。
 多少の順応する能力があるとしても、日本の梅雨時から真夏にかけての高温多湿は、かなり彼らを苦しめるであろうことは、飼う以上はしっかり念頭におくべきでしょう。事実、今までどこの動物園ででも、アスペルギルスというカビの一種の病気で、しばしば彼らの命を落としてしまっています。
 それ故に繁殖期にしても、ある程度コントロールする必要に迫られます。6月の梅雨時あたりにふ化して育雛させねばならない事態になれば、途端にヒナは先程述べたアスペルギルス症の恐怖にさらされます。巣を思いの他汚し、かつヒナは病気に対する抵抗力はほとんどないのですから。
 今年はとにかく春先早く産卵してくれるよう環境作りに努め、4ヶ所で抱卵が始まったのですが、うまくゆかず、残った1羽を人工育雛に切りかえ、なんとか育てることができました。
 二回目の産卵は4月10日で、5月に入り次々ヒナが誕生しました。しかし、この時期ではアスペルギルス症になる危険が大きいので、親からとりあげ、人工育雛にし、ヒナの容態の変化に応じられるよう努めました。けれどなかなか思うようにはゆかず、つらい思いをしましたが、なんとか二羽は、元気に育っています。
 フンボルトペンギンは、実は貴重な鳥なのです。原産地の環境破壊が進み、数を大幅に減らしているのです。彼らを飼育する園館にとっては、一羽でも多く増やすことは大事な使命、と言わざるを得ません。

« 105号の3ページへ105号の5ページへ »

一覧へ戻る

ページの先頭へ