133号(2000年01月)10ページ
動物園こぼればなし 〜 ゴロンの受難 〜
日本の動物園のゴリラ繁殖に協力する為に、上野動物園のタイコと当園のトトを交換する事になり、7月8日にタイコが来園し、トトの部屋に収容した。
オスのゴロンはいつものように何の疑いもなく、部屋に入ってきて夕食を食べ始めた。好物のバナナ、リンゴを食べた後、トトの部屋をのぞいてビックリ!!
トトがいるはずの部屋に、初めて見る年増で太り気味(日本のメスゴリラの中で一番体重がある。33才で144kg。)の来園したばかりのタイコがじっとゴロンを見つめ、目と目があったからたまらない。ゴロンはギャー!!20年間聞いた事もない悲鳴をあげ、びっくりした事、びっくりした事・・・。
餌のキャベツ、白菜等を投げつけ、扉ごしに顔をあわせるとギャー、ギャー。いくらゴロンが悲鳴をあげ、扉をたたいてもタイコは知らん顔、落ち着いたものである。オスのなさけなさと、メスのずうずうしさを見ているようであった。
夜になりゴロンがさわぐと、オランウータンのオスがうるさいと言わんばかりに、ドン、ドン、ドンと力いっぱい扉を叩き、外では入舎しなかったライオンがウォー、ウォー・・・5分から10分間隔で、このさわがしさが朝まで続いたおかげで、輸送箱に収容されているトトを監視していた私は一睡もできず寝不足になってしまった。
ゴロンのイライラがピークに達した時に、シュートに数多くついている長さ1cmぐらいのビョウの扉を両足で蹴飛ばしてしまった。その両足の裏の傷が化膿してしまい、今でも治療中である。
(類人猿担当 小野田祐典)