でっきぶらし(News Paper)

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153号(2003年05月)5ページ

カリフォルニアアシカ ワールドの独り立ちとエースの誕生/野村 愛

 皆さん、アシカ池に新しい仲間が増えたのをもうご覧になりましたか。7月1日にグリアン(オス、16歳)とミディ(メス、11歳)の間に5番目の子供、愛称「エース」が誕生しました。ミディに出産の兆しが見られてからもなかなか生まれず、私達をやきもきさせていましたが、新しい月の始まりの早朝に元気な赤ちゃんを出産してくれました。「一日生まれ」とかけて「動物園のエースになってほしい」という想いを込めて、「エース」と名付けました。お兄ちゃんのワールドも含めて、これでアシカ池の仲間は4頭になりました。

 エースが生まれる前、アシカ池ではちょっとした騒動がありました。その日はちょうど土曜日だったので、たくさんのお客さんが見守る中、その「捕り物劇」は行われました。去年の6月生まれで1歳になったばかりのワールドは、お母さんのミディが次の子をもうすぐ出産するというのに、ミディに甘えてばかりでした。数日前からあまりに構って構ってとしつこくなってきたので、そのうち怒ったミディがワールドを追いかけ回すようになりました。それはまるで、親離れを促しているかのようでした。何日間もそのような状態が続いたため、ミディに安心して出産、子育てをしてもらうために、ワールドをミディのそばから離すことに決めました。プールの水を抜き、飼育係が3人がかりでワールドを捕まえて隣の小プールへ移動させ、間の仕切を閉じて行き来が出来ないようにしました。分けてからしばらくは、ワールドがミディに向かって大声で鳴きながら、プールを隔てる柵の間から大プールをのぞき込んだり、壁によじのぼろうとしたりする様子が見られ、見ているこちらも切ない気持ちになってしまいましたが、現在ではまだミディにアピールする様子も見られますが、だいぶ落ち着いてきたようです。ワールドを見たら「お兄ちゃん頑張ってね」と声をかけてあげてくださいね。

 さて、今ではすっかり泳ぎも板に付いてきたエースですが、当初の予想を上回り生後4日目からプールに入る成長の早さで、私達をびっくりさせてくれました。その日の午前中、プールの中央にある島の部分にミディと一緒にエースが寝ているのを発見、びっくりしたのもつかの間、一時間後に見に行くと今度はプール奥の陸上部分にある飛び込み台の下で、またしても2頭が一緒に寝ていました。まだ泳げないだろうにどうやって島に渡ったのだろう?と皆で首をかしげていたところ、翌日の夕方、陸上にいるエースに向かってプールの中から尾びれを差し出しながら鳴いているミディの様子が見られました。それはまるで、プールにおいでよと誘っているかのようでした。そしてその一時間後に、またしてもエースは島にいたのです。きっとミディが背中に乗せて運んでいるんだよ、いやいやきっと口でくわえて運んでいるんだよ、と様々な憶測が飛び交いました。その答えは次の日に判明。少しおぼれ気味によたよたと泳ぐエースと、そのそばで時々前鰭で支えたり、または背中に乗せるようにして下からおぼれないように軽く持ち上げたりしながら泳ぐミディの姿が観察されました。エースが陸に上がる時も、ミディは上半身をプールから出して前鰭や胸でエースを支えながら上がりやすいように助けてあげていました。ミディは過去に育児放棄歴があるのでしっかり子育てをしてくれるか心配していましたが、その献身ぶりに「さすがミディ、よくやった!」と思わず声をかけたものでした。これからのエースの成長が楽しみです。

皆さんも是非アシカ達に会いに来て下さいね。

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