146号(2002年03月)2ページ
エンペラータマリン 人工保育
子供動物園の横に、南アメリカに生息している小さなサルを展示している「小型サル舎」があります。これらのサルは、群れで行動しており、仲間と毛繕いをしたり、コミュニケーションを図りながら枝から枝へと敏捷に駆け回ったりしています。
その中で立派なヒゲがあるのがエンペラータマリンで、両親と子供達3頭の5頭で生活していましたが、4月25日に新たに2頭の赤ちゃんが誕生しました。この仲間は、授乳の時以外はほとんど父親やお兄さん、お姉さんたちが子供を背負って移動して、子育てに協力しています。そして今回も生まれた当日は、2頭とも仲間の背中に乗っているのを確認しました。
しかし翌朝1頭が親から離れて、寝部屋のケージの網にしがみついているのを発見しました。すぐに子を手に取ってみると、まだ温かく、落ちたばかりのようでした。そこで、誰かが迎えに来ることを期待して、しばらく様子を見ることにしました。
少し皆が警戒している様子でしたが、そのうちに子をすくい上げ背中に背負い、放飼場に移動してくれたのです。まずは一安心。ただし、1度落ちると言うことは要注意です。その後他の部屋の掃除をし、戻ってくると、今度は放飼場の床に落ちてしまっていました。「しかたがない。とりあげよう。」と言うことになり、人工保育に切り替えることにしました。
体温が下がっていたため、まずは温めることにしました。その時の一番いい方法は「人肌」です。体重が鶏卵の半分ぐらいしか有りませんから、人工的に急に温めるのは危険です。人肌でやんわり温めることがポイント!
続いては哺乳器の準備です。ほ乳瓶はガラスの注射器を、そして乳首は小さなペット用の乳首を加工して使うことにしました。
早速人用の新生児ミルクを手作り哺乳器に入れて与えてみると、力強く吸ってくれました。そして保育箱にフロアーヒーターを敷き、タオルを載せ暖をとり、その中で小さな赤ちゃんは親代わりの小さなタオルを握って、眠りにつきました。性別はメスでした。
今現在、朝の6時から夜の10時まで1日4時間おきにミルクをあげていますが、下痢をすることもなく順調に大きくなっています。もう1頭は展示室の仲間のもとで大きくなっているので、これからの成長を比べてながら見て行きたいと思います。