155号(2003年09月)6ページ
実習生だより 東京農工大獣医学科2年 浅沼 貴文
8月の終わり。9月からの実習に備えて、10数年ぶりに日本平動物園を訪れました。そ
の変わらない姿を見て、懐かしさとともに、
当時の自分との立場の違いを自覚したのを覚
えています。
実習では、午前中の仕事は入院中の動物達の餌やりとゲージの掃除を終わらせることでした。中でも餌やりは、動物に合わせてさまざまなフルーツや野菜や生き餌を組み合わせて与えているので準備が大変です。動物達は餌の時間をよく覚えていますから、とくにインコやオウム達は私が餌を作るのに手間取っていると盛んに催促の大声を出します。面白いもので、一部が鳴き始めると、呼応してたちまち部屋中の鳥の大合唱になってしまい、大音量になります。お世話になっていた飼育係の堀田さん、石垣さんのいないところでは、こちらも負けまいと「うるさーい!」と言い返したりしていました。これもコミュニケーションのうちです。
ここの動物病院は、園内の動物でケガや病気のものもいますが、国内では飼育禁止で回収された貴重な動物の一時的な保管もしています。上記の鳥達の中にもそういった鳥が多く含まれます。彼らはすでにヒトにも慣れ、野生復帰は困難に思えました。さらに、日本平動物園では「傷病野生鳥獣保護センター」を設置していて、ときおり県内で保護された野生動物が運び込まれてきます。私が実習中にもサギやハトなど数匹が持ち込まれました。今後はこういった動物達がますます増加していくでしょう。現地での乱獲や生活環境の変化のみでなく、持ち込まれ日本に馴染んだ動物達によって日本の環境も大きく影響を受けてしまいます。もし私が将来獣医師としう職業についた場合、こういった動物達に接する機会が多くなると思いますが、彼らに対してどういったスタンスで臨んだらいいのか、自分なりの姿勢を案が得ていかなければならないと思いました。動物の場合、なにがなんでも治療をするのではなく、やむを得ず最終手段をとらざるを得ないことも多くあることも学びました。
午後は、獣医師の海野さんや八木さんの指示で動物園の獣医師の仕事をいくつか手伝わせていただきました。動物園においては毎日のように大掛かりな動物の治療や手術があるわけではありませんから、忙しい午前中とは違ってときにはフリーな時間を頂いて、ゆっくりと動物園を見学させていただく機会もありました。ひとつの動物をじっと見ていると、動きの一つ一つが本当に面白く時間を忘れてしまいます。昼間は暑いからかもしれませんが、閉園時間近くの方が動物が活発に動いていて仕草をよく見ることができました。獣医さんは朝晩の見回りで、動物の仕草や排泄物を見て健康状態を図る参考にしたりしますから「見ること」も大切な技術の一つです。つぶさな観察と飼育係の型と協力した管理で、病気を「予防」することが一番大切なことだと教えていただきました。野村獣医師にはアシカの餌やりを体験させていただきましたが、アシカを本当によく調教できていて、このことも動物を管理する上で非常に重要なことだと感じました。
わずか10日間でしたが、大学の講義ではなかなか学べない体験をすることができました。動物病院の方々をはじめ、大変お世話になりました。最後にこれを読んで下さった皆さんは、近頃「動物園」から疎遠になってはいないでしょうか?私もそうでした。もっと皆さんが動物園に気軽に足を運んで動物と直に顔を合わせることができれば、そこから何かしら感じることができると思います。是非動物園を訪れてみてください。