159号(2004年05月)4ページ
リスザルのチッチ成長記
私は今、動物病院でリスザルの チッチくんの人工保育をしています。 人工保育とは、おかあさんにかわって飼育係がミルクをあげて子供を育てることです。チッチは4月26日に生まれましたが、おかあさんの背中で衰弱してぐったりしていたので、そのままでは死んでしまうと取り上げて、人工保育になりました。
1〜2日目の哺乳では、自力で飲むことができず、口元にほ乳瓶の乳首をあてて、少しずつミルクををなめさせる様なやり方で哺乳をしました。3日目になると、お腹が減ってきたせいか、「ピーピー」と鳴きながら、指をしゃぶって、かわいい大きい瞳でこっちを見てくるんです。そして、弱い力でしたが必死に吸おうとして、少しずつ自力で吸うようになってきました。
それからは徐徐に徐々に哺乳量も増え、吸う力も強くなってきました。体重も増えてきました。リスザルの赤ちゃんはおかあさんにしがみついて暮らしているので、自然の状態に近づけようとチッチくんのおかあさん代わりにぬいぐるみにしがみつかませてみました。嫌がったり、大きさが合わなかったりで、気に入ってもらえる様にいろいろなぬいぐ るみを探しました。一番気に入ってくれたものは、リスのぬいぐるみ でした。毛並み がリスザルに近 いシッポの部分 にいつもしがみ ついていました。今でもチッチに とってはリスの ぬいぐるみが母 親なのです。こ の時に私は、「 人工保育よりも、やっぱりおかあ さんが育児をし た方がいいんだ。」と思いま した。人間に馴れ、仲間に戻れないということもありますが、おかあさんの愛情と会話が必要なのではないかと思いました。リスのぬいぐるみにしがみついて鳴いているチッチに接して、何一つ返事は返ってきません。
5月6日には、歯が生え始めてきました。そして、だんだん自分で動き回るようになってきました。人の手にも昇るようになり、リスのおかあさん(ぬいぐるみ)からも離れて遊ぶようになりました。運動をするようになったたため、飲むミルクの量も増えていきました。最初は1mLを自力で吸うのがやっとだったのが、10mLを自力で吸うようになりました。元気もあり、順調に成長してきました。
6月11日には、生まれた当初から壊死し黒くなっていた尾の半分弱がとれてしまい、少し尾の短い状態になってしまいました。そろそろ離乳の練習をさせるために、バナナを食べさせてみることにしました。細かくして口に入れ味を覚えさせたら、そのうち自分で食べるようになりました。それからはバナナの他に、リンゴ、煮イモ、ブドウなどを口に入れて味を覚えさせました。今ではたくさんの物を食べられるようになりましたよ。好物は、ミルクに浸した食パンとミルワームです。
おてんばチッチは元気いっぱいに成長しています。
(石垣 直美)