160号(2004年07月)7ページ
【動物園実習だより3】
学芸員実習で学んだこと
徳島大学 柿本 康子
実習最終日のことです。職員の方々に「10日間お疲れ様だったね」と言われた瞬間、自分でもよくわからないうちに自然と涙が溢れていました。本来、学芸員実習とは、学芸員の仕事とはこうしたものであるということを体験し、学ぶべきものだと思います。しかし、正直なところ私が動物園での実習で学んだことは、それ以上に大きく、深いものだったように思います。
実習中、普段やりなれないことを体験させていただき、ほぼ毎日体力は限界に近かったです。それでも、最終日に「実習もっとやりたいか?」と聞かれた時、私は迷うことなく「はい」と答えていました。今だから正直に言いますが、私は実習の数ヶ月前からうつ状態が続き、誰とも会いたくもない、何もしたくない、できればこのまま消えてしまいたいというような心境が続いていました。しかし、動物園の実習の最終日、久しぶりに自分の意志で「もっと実習がしたい、このまま終わりたくない。」というやる気が生まれていました。
その結果、職員の方々が私のわがままを特別に配慮してくださり、本来10日間だった実習を、7月29日から8月20日まで延長させてくださいました。諸手続きや、実習生の面倒を余分に見なければならなくなってしまった職員さんたちには、大変なご迷惑をおかけして本当に申し訳なく思っています。また、それと同時に、言葉では表せないほどの感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。もちろん、実習自体で学んだことも多くあります。実習を延長させていただいたおかげで、通常の実習生よりも多くの動物園の飼育体験(アジアゾウ、中型サル、アシカ、クマ、ブチハイエナ、猛獣、アリクイ、ウサギ、モルモット、ヤギ、鳥類など様々)が出来ましたし、動物園の裏側をより多く見ることができました。元々動物は好きでしたが、それでも新しく知ることばかりで、とても貴重な体験をすることができました。
それまでの私は、正直人見知りで、人は怖いものだという意識が強くありました。しかし、大好きな動物たちの世話をし、本当に気さくで親切な職員さんたちに指導していただいているうちに、なぜこんなに優しい人ばかりなのだろうと感じるようになり、人への恐怖心が次第に薄れていくのがわかりました。そして、次第に自分から自然に職員さんやお客様に対しても、声がかけられるようになっていきました。
最後に、繰り返しになってしまいますが、今回の日本平動物園での学芸員実習は、ただの学芸員としての学習だけでなく、自分の考え方、生き方を左右するような、自分自身についての学習でもありました。出来の悪い実習生の実習を快く受け入れてくださった職員の皆さん、本当に心より感謝申し上げます。実習を通じて一まわりも二まわりも成長することが出来た私は、現在元気に大学生活を送っています。職員さんたちをはじめ、様々な動物たちにまた会えることを楽しみにしています。