163号(2005年01月)4ページ
オランウータンのジュリー(メス)と女性
オランウータンのジュリー(メス)は来園4年目。御年40才(ちなみに人の年にすると80才)になります。この4年、「鳴くまで待とうホトトギス」という家康の心境で接して参りました。
変化したことと言えば、1ヶ月以上部屋を移動しないこともあった彼女が、今年に入り寝部屋から室内展示室へシュート扉を開放にし、人が見ていても時々は移動するようになったということでしょうか。
また、室内展示室に移動しても以前ですと、一日中おりにしがみついて来園者の方を見ていることが多かったのが、最近では来園者側のガラスの所へ来て、来園者の目を気にせず外の景色を眺めている心の余裕も出てきました。担当の私に接する態度も、何となくやわらかくなった気がします。
以前の彼女ですと、給餌その他の用事で名前を呼ぶと、こちら側に近づいてくる時緊張感が身体全体からあふれている感じでした。しかし、最近はそれをあまり感じなくなりました。
とは言うものの虫の居所が悪い時は、来園当時のまま本性を見せます(まあ、誰でも機嫌が悪い時はそうですね、彼女に限ったことではありませんが)。つばをひっかけたり、手を引っ張り込もうとしたり、ミルクを呑ませるときなどは哺乳ビンをくわえ込んで持っていこうとしたりと、様々なイタズラを仕掛けてきます。
ところで、来園時から変わらないことが一つあります。彼女が来園当初から変わらぬ態度、いやむしろ段々リラックスした態度を見せる相手、それは女性なのです。夕方動物達の様子を見に来る2人の女性に、それははっきりと見られます。女性が入舎してくると、彼女は部屋の手前に来て身体を寄せます。
そして、女性が身体をなでてやると、「もっと」と言わんばかりに身体をすり寄せ、おまけにのどを鳴らして甘えるのです。そして、手を出してと言えば手を出し、足を出してと言えば足を出し・・・。その態度はなんなんだろう。
毎日世話している私より、ちょっと夕方のぞきにくる人の方が彼女にとって楽だなんて。あーあ、彼女にしてみると、私が男であることそのものがウザイ存在なのかも、その男のやることなすことが彼女のかんに障るのかも。彼女は「やっぱり女は女同士、なんの気兼ねもなく話があうのよ」と、きっと私に言いたいに違いありません。
池ヶ谷 正志)