でっきぶらし(News Paper)

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164号(2005年03月)6ページ

もう一度、あの空に

春になると、盛んに野鳥の姿を見かけます。園内でも、上の池で木の上に集団で繁殖の巣を作っているアオサギやコサギを始めとして、ヒヨドリやムクドリ、ツバメなど、さまざまな自然の鳥を見ることができます。

さて、動物園では日本にいない世界中の鳥もご覧いただけます。熱帯鳥類館にいるカンムリシロムクという鳥をご存知ですか。白くて目の周りが青いムクドリの仲間の鳥です。カンムリシロムクのふるさとは、東南アジアにあるインドネシアのバリ島です。彼らの生息地は環境悪化のために国立公園に指定され保護されています。しかし、数少ない鳥ということで高値で裏売買されるために密猟が後を絶たず、現地の生息数はもうわずか10羽もいないのではないかとも言われています。

日本では、このような絶滅の危機に瀕した動物の血統管理をするコーディネーターを決めていて、動物園水族館間で種の保存を目的とした繁殖のための個体の移動を行なっています(当園では、オオアリクイとレッサーパンダを担当しています)。カンムリシロムクの担当は、横浜市にあるよこはま動物園ズーラシア内の繁殖センターです。ここは非公開の施設ですが、カンムリシロムクやバク、カグーなど、世界の希少動物の繁殖に取り組み、さまざまな研究も行なっています。そして、画期的な取り組みとして、日本で増えたカンムリシロムクを現地に放す活動も始めました。

当園では、昨年秋に、熱帯鳥類館の「ジャングル展示室」でカンムリシロムクの子供が生まれました。今回、この子供を含めた3羽を繁殖センターに出園し、その活動に協力することになりました。新たな門出を祝うかのような晴天の日、3羽は横浜に巣立っていきました。そして、入れ替わりに新しく2羽が来園し、引き続き繁殖に取組んでいく予定です。

いつか日本平動物園から巣立った個体が現地の保護活動に貢献し、以前のようにバリ島の空をたくさんのカンムリシロムクが飛ぶ姿が見られるといいですね。
(野村 愛)

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