でっきぶらし(News Paper)

一覧へ戻る

« 164号の9ページへ164号の11ページへ »

164号(2005年03月)10ページ

病院だより シンリンオオカミのガブ天国へ

シンリンオオカミのメスのガブは、平成14年に東山動物園から来園しました。最初は、今のクマ舎のハイエナ展示室にオスのバロンと一緒に暮らしていました。

来園して初めての夏、熱中症で倒れたのが闘病記の始まりでした。暑さ対策のため、現在の猛獣舎へ移動したのですが、今度は冬になり、寒さのためかまたケイレン発作を起こして倒れてしまいました。入院し、毎日点滴をして元気を取り戻し、再びバロンと暮らせるようになりました。しかし、その後も時々発作を繰り返すため、飲み薬をやめることができずにいました。

それから、2年の月日が経ちました。寒さの厳しい今年の1月中旬、再び発作を起こしたガブは、とうとう入院することになりました。寝ながら困ったような顔つきでこちらを見ることはできますが、立てません。麻酔もかけずに病院まで運べるほどの状態でした。

入院してからは、一時状態も良くなり、入院室の金網をかみ切るくらいの元気さを取り戻して、春にはまた展示室に戻せるかなと思っていました。しかし、4月21日、再び発作を起こしました。いつもなら、治療をして、2日くらいで立てるまでに快復するのですが、3日経ち、5日経ち、一週間たっても立てません。寝たきりでは筋力が落ちてしまうので、一日に何回か部屋に入り、介添えをして立たせ、歩行練習をするようにしました。が、立ちたい意識はあるものの、体力が持たず1分以上は身体を支えていられない程の衰えでした。

そして、5月7日、病院の外に出ることができないまま、ガブは亡くなりました。「苦しかったね、頑張ったのにごめんね、ガブ・・・」亡骸に向かって手を合わせ、私は頭を下げることしかできませんでした。解剖の結果は、本当によく頑張ってきてくれていたと思える状態でした。

ガブが入院する少し前に調子を崩して入院したヒョウのヒョウタは、5月に退院し、老齢ながらも春の木漏れ日の中でのんびりと暮らしています。その横では、一人になったバロンが、担当者を見かけては走ってきて、愛嬌のある姿を見せてくれます。バロンの隣のガブの寝室を見るたびに、ガブのおもかげが浮かんで、寂しさを感じます。もう一度、外で元気に走らせてあげたかった。ガブ、ありがとう。どうぞ安らかに眠って下さい。
(野村 愛)

« 164号の9ページへ164号の11ページへ »

一覧へ戻る

ページの先頭へ