でっきぶらし(News Paper)

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168号(2006年02月)6ページ

ゾウさんの未知なる能力!

ゾウの担当をしてから、かれこれ10数年になりますが、先日改めてゾウの不思議で未知数な能力に驚かされる出来事がありました。

朝、室内でフスマ(パン粉のような食べ物)にミネラルなどの添加物を混ぜ水を入れ手でこねてダンゴ状にして与えているのですが、その入れた水の量が多くてドロドロなのか、逆に少なくてパサパサなのか、そしてそれが自分の好みなのかそうではないのか、何らかの能力を持ってして識別、判断しているのではという驚愕の行動(ちょっと大げさか?)を目の当たりにしたのです。「やっぱりゾウはスゲーや」とえらく感心ならびに感動した!!という気分にさせられました。

これをもう少し詳しく説明してみます。うちの2頭のゾウ(ダンボとシャンティ)にも食べ物の好みがあるようで、ダンボはこのフスマダンゴが大変お気に入りのよう。よく「早くちょうだい」とばかりに足でパンパンと地面を踏みならして催促します。対してシャンティは、味というよりそのダンゴの固さ加減にどうもこだわっているようなのです。

不思議な光景を見たのは、ある日いつものように普通にフスマに水を入れ、それを私が手で混ぜ合わせて口の所に持っていったところ、いつもならば口を開けてパクっと食べるのですが、その日はなぜか口を開けようとしません。「んー、おかしいな〜」と私。たまにフスマが古かったり少し油っぽくなっている時には、もう1頭のダンボ共々食べない時がありましたが、その日のフスマはダンボは普段と変わらずにおいしそうにパクパク食べていましたので、これらではないようです。「これは、一体どーなってるの?」と私はしばし瞑想状態に陥ってしまいました。

しかし、よーくそのバケツの中のフスマを見ると入れた水の量がいつもより多かったようで、ちょっとドロドロです。試しにそれにフスマを追加し固めにしたところ、ちゃんと口を開いて食べてくれました。

でも、シャンティはなぜそのダンゴが軟らかすぎるということがわかっていたのでしょうか?一度口にしてからその後食べないか、はたまたダンゴの形が出来上がってからそれを見て口を開けないというならわかるのですが。「ウ〜ン、これは一体!?」頭の中でその原因をいくつか並べ、「これはこういうことなのか、またはこうなのか?」と私なりに考えを整理して出した答えはこうです。

おそらくシャンティは、バケツの中に水を入れる時のその音(というよりもバケツの中に水が落ちる振動)を感じ取り、その水の量が適量かどうかを判断していたのではないでしょうか。人間の感覚では、これ程の正確な判断をすることはとても不可能に近いのでは?と思いました。

そういえば、よくゾウは仲間同士でコミュニケーションを取る時、人間には聞こえない音である低周波音で会話していると言われます。その能力を持って、あの莫大な被害を出したスマトラ沖地震による津波でも、ゾウたちは津波が来る前にそれを察して小高い山の方へ避難していき、1頭のゾウも災害に巻き込まれる事はなかったと聞きました。全くゾウの能力には本当に驚かされます。

この「フスマ事件」で私は「目からウロコ」の状態でしたが、普段ゾウと接していると、ゾウのすごさをまざまざと見て感じ取れる場面がいくつかあります。それも少し紹介させてもらいます。まず、「感覚の鋭さ」。ゾウは後ろに下がっていくとき、自分の後ろは見えていないのに、ちゃんと障害物を避けていくことができます。

運動場のどこに何があるか、それをすべて頭の中にインプットしてあるため、後ろを見なくても平然とバックができるのです。また、「その鼻の器用なこと」。ダンボは普通のミカンを与えると、そのミカンを鼻の内側に載せ、転がすようにしてなんとミカンの皮をむいて中身だけを食べるのです。皮が嫌いで食べないのではないようですが、とにかくその光景を見ると「ウーンすばらしい」と思います。

さて、夕方カボチャを丸ごと1個与えているのですが、シャンティはそれを食べる時に足で踏みつぶして割って食べます。踏んでカボチャが割れる「ボンッ!」という音は実に痛快なので、どうぞ見に来て下さい(毎日3時30分にご覧になれます)。シャンティは、そのカボチャの味が自分の好みのものかどうか、どうもカボチャを見て判断しているようです。これも詳しく説明すると長くなりますので割愛させていただきますが、とにかくおそらく視覚でとらえて判断しているのだと思います。

ちなみに、ゾウが1番好きな食べ物はパンだと思います(これはシャンティたち本人に直接聞いてみないとわかりません)が、その1番好きなものを最後までとっておいてから最後に食べるという採食行動をよくします。また、好物のパンを食べている時のおいしそうな顔!皆さん、よーく見てくださいね。おいしい時には「オイシー!」という顔をゾウさんはするんです、絶対!超ビミョ〜ですけど・・・。

ゾウを飼っていると、本当にいろいろとゾウという動物の能力には驚かされます。この愛すべきゾウたちも、悲しいことに野生での生息数が減っています。シャンティたちアジアゾウは、アジアの森林の消滅などにより生息数が5万頭以下に減ってしまいました。

アジアの森で平和に暮らすゾウたちが、これからも地球上から姿を消すことのないよう、我々人間は改めて普段の生活を見つめ直していく必要があるでしょう。どうぞ皆さん、シャンティの「オイシー!」という顔を是非見に来て、そこにアジアの森を感じ取ってください。3時30分にゾウ舎でお待ちしております。

(松永 亨)

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