171号(2006年08月)11ページ
病院だより オオアリクイのおしゃれくつ下?
今回は、オオアリクイのメス「ムチャチャ」についてご紹介します。アリクイといえば、長い顔が特徴ですが、彼女は顔が少し短めでチャーミングな容姿をしています。餌の食べ方も個性的で、ガツガツ一気に食べるだんなさんのチチカカや、ゆーっくり時間をかけて食べるお父さんのジョッキーに比べて、ムチャチャの食べ方はペロペロペロ・・・と、まさにおしとやかです。
さて、ムチャチャは今年に入ってから左後肢をケガしてしまいました。皮膚に潰瘍ができてしまったのです。あれやこれや手を変え品(薬)を変え治療を続けていますが、もともと代謝が遅いこともあってアリクイは傷の治りが遅く、私達の頭を悩ませています。
運動場の土で傷口が汚れないように、また、自分でなめて傷を深くしてしまわないように伸縮包帯を巻いて患部を保護していますが、それはさしずめ底のないくつ下(リストバンド?)のようです。白や緑の包帯を使うので見た目はちょっとおしゃれな感じです。しかし傷口からずれないようにとあまりきつく巻くと血液がそこで滞ってしまい、また、保護しようと念入りに巻きすぎると中でむれてしまうので、巻き具合にも工夫が必要です。
やっと傷が治ってきてもう少しという状態になったので、今度は乾かすために通気性の良い別のカバーをしようということになりました。飼育担当者があれこれ工夫して、排水孔の金属の受け皿とマジックテープを使ってムチャチャ用特製足カバーを作ってくれました。
早速ムチャチャに装着してみましたが、慣れないものでやはり違和感があったのか取ってしまい、まだ改良が必要でした。そんな中、木の成分からできた薬を試してみたところ、期待以上に傷が良くなってきたのです。この薬、オーストラリアでは人用に使われているそうで、良い香りがします。
先日、清水のアロマテラピーのお店でも売っているのを見かけました。べらぼうに高い薬なので病院のお財布を見つめては溜息が出てしまいますが、効果もあることしだし、大切なアリクイのため!有効活用しています。ちなみにムチャチャもこの香りがお気に入りな様子で、なめだすと止まりません(なめないでほしいですが・・・)。
傷が完全に治るまでにはもう少し時間がかかりそうです。くつ下を脱ぐ日が早く来るように、今日もピッタリフィットの改良くつ下を思案中です。
(野村 愛)