173号(2006年12月)1ページ
【次世代へ命をつなぐ】 「シロガオマーモセット編」
原猿、サル、類人猿、ヒトを全て合わせたグループを霊長類と呼んでいます。分類学上の正式な和名は霊長目「プリマーテス」といいます。原猿類、新世界ザル、旧世界ザル、類人猿、ヒトを含み、現存するものは約200種が知られています。人間は世界各地のいろいろな環境に住んでいますが、人間以外の霊長類は主に中南米、アフリカ、南アジア、東アジアの熱帯や亜熱帯地域に生息しています。
現在、世界の人口は一秒間に2人位増えつづけています。しかし野生動物の多くは、心なき人間たちの行いにより、生息環境の悪化と生息地の減少に追われ、毎日多くの仲間を失っています。動物園の役割の一つに「種の保存事業」があります。希少な野生動物の素晴らしさを多くの人たちに知ってもらいたく、私たちと同じDNAの一部を持つ「シロガオマーモセット」にスポットを当ててみました
。
小型サル舎の一角に、顔が白髪、両耳あたりが黒髪、他全身を薄こげ茶色に覆われた可愛い小型のサルが眼に止まります。その名は、顔立ちからも一目瞭然「シロガオマーモセット」といいます。ところが、体の他の部分の色はほとんど同じで、顔の白黒の髪色を反対にした「コモンマーモセット」も同じ仲間です。南アメリカ・ブラジル南東部の森林に生息している大変希少なサルの仲間です。
当園では昭和59年から飼育し始めましたが、なかなか子宝に恵まれませんでした。飼育し始めてから17年目の平成13年に初めて繁殖に成功しました。同年には他の個体が三つ子を出産しましたが死産でした。三つ子を出産した個体もやがて老衰で天寿をまっとうしました。このため平成13年に繁殖した雌1頭を飼育していたが、縁あって今年春に若いお婿さんを迎えることが出来ました。
当園のシロガオマーモセットは何故か神経質であまり私たちの前にも姿を見せてくれません。そんな2頭ですが、めでたく10月28日には2頭の出産があり、現在懸命に子育て奮闘中です。担当者もそんな彼らの性格を配慮しながら心やさしく奮闘中です。動物園にとっては次世代への掛け橋となる「子」、無事に成長してくれることを願ってやみません。