176号(2007年06月)4ページ
「フワフワでかわいいよ!!」
4月30日の朝、ツクシガモのメスが巣箱の中で約30日間温めていた卵がようやく孵化しました。
当初巣箱内には9個の卵を産卵して母鳥が大事に抱いていたのですが、孵化予定日の数日前から毎日一個ずつ巣箱の中から卵が出されていて、それを他の鳥がつついて殻を割ってしまうという事例が相次ぎ、結局3卵だけが残りました。
原因は分かりませんでしたが、割れた卵の中には孵化直前の雛の姿が確認できていたのでとても残念でした。
担当としては「早く孵化してくれ〜」という思いで雛の孵化を待ちました。そして、孵化予定日を少し過ぎた日の朝、巣箱内から聞き慣れない「ピー、ピー、ピー」というか細い声が聞こえた時は、心の中で「やったー、よく孵化してくれた」という声をあげたほどでした。
その後まもなく母鳥の後に続いてフワフワのかわいい3羽の雛たちが巣箱から出てきてウロチョロしはじめました。
フライングケージの鳥達の担当になってからは、まだ一度もツクシガモの繁殖にたずさわっていなかったのでドギマギしてしまいました。しかし、ツクシガモは他の種類のカモと比べて気が強く繁殖期には縄張りを持つので、少しでも雛に近付く鳥がいればすぐに追い払って賢明に雛を守る姿が見られたので、安心して子育てを見守ることができました。
ヒナたちは孵化したその日の午後には、池で泳ぎ始め1羽はわずかですが潜水もしてそのたくましさに驚かされました。2、3日経つと1羽だけが単独行動をとるようになりました。
人間でいうところの「B型」タイプで、「右と言えば左、白と言えば黒」といった感じです。あまりにもその行動が当園で働く○永飼育員に似ているので、その飼育員の名前をとって「とおる君」と名付けました。
観察のために親子をさがすと「とおる君」だけが見当たらないことがしばしばあり、よーく探してみると離れたところで休んでいたり餌をついばんでいたりと担当者や来園者をヒヤヒヤさせ別な意味で人気者でした。
しかし、孵化してから5日目に大変残念なことにその子が死亡してしまったのです。元々体つきが他の2羽と比べてやや小さく動きもゆっくりで体が少し弱かったのが原因だと思われます。
短い命でしたが他の2羽より人一倍いや鳥一倍人気者だった愛称「とおる君」に冥福を祈りたいと思います。
さて、残る2羽は順調に成育中で、孵化した時よりも体が3倍くらいの大きさまで成長し、元気に池で泳いだり小さい翼を一丁前に羽ばたかせたりと今後の成長が楽しみな毎日です。皆さんがこの記事を読まれる頃には、この2羽の雛たちはほとんど親鳥と変わらないくらいの大きさまで成長していると思われますので、立派に成長した姿をぜひ見に来てください。
(花崎 貴行)