でっきぶらし(News Paper)

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182号(2008年06月)4ページ

動物園実習を終えて

岩手大学 農学部 獣医学科4年 村松 美笑子  

私はこの度9月2日から8日まで日本平動物園で実習をさせていただきました。
獣医実習であり「基本的には動物病院内での実習」ということだったので、そんなに沢山動物に接するわけではないのかなあ、なんて思っていたのですがとんでもなかったです!まず最初に驚いたのは動物病院内の動物の多さでした。

動物園の展示動物でいろいろな事情で収容しているライオン・サル・ヤマネコなどの動物にくわえ、怪我した野鳥などの保護動物もおり、実習初日で44種70個体もの動物が収容されていました。「動物病院だけで小さな動物園ができちゃう!」と開いた口が塞がらない気分でした。

しかも同じ種類の動物でも、テリトリーが重要になる動物はそれぞれ別個のケージで飼育しているのです。それだけの数の動物を、毎日それぞれの状態に配慮して飼育管理を行っているのですから、担当者の方々には全く頭が下がる思いでした。

次に実感したのは、動物園の内側に入るってことは「動物を見る側」から「動物に見られる側」にまわることなんだなあ、ということでした。実習初日に注意されたのが、飼育室の掃除などに入る時、オオタカやフクロウ、クジャクなどは「新しい人が入ってくると威嚇するから気をつけてね」ということでした(実際に攻撃してくる個体の場所には入らなかったのですが)。

威嚇などしてこないような個体でも、飼育室に入ってデッキブラシをかけていて、ふと顔をあげると、こちらをじっと見つめている目とバッチリと合うことが多く、「見られてる!警戒されてる!!」とものすごく感じました。

飼育場所等を変えるのはこちらの都合でも、彼らが生息する場所はあくまで彼らのテリトリーであり、私は「侵入者」に過ぎないのだなあと感じ、また動物にとってテリトリーというものがどれだけ大事なものであるかを実感しました。

そして、この「見られる側」をも越えて彼らの「テリトリーの一部」になった時初めて本当の仕事ができるんだろうなあと思いました。

短い実習期間中でもいろいろなことがあったのですが、一番印象深かったのはシンリンオオカミのバロンの死でした。亡くなる前日にちょうど園内を回り、バロンに目を奪われました。他の飼育場に向かう途中で僅かな時間だったのですが、真っ白な毛皮で凛と立つ姿が神々しいまでのたたずまいで本当に見惚れてしまったのです。

一見して全く具合が悪いようには見えず、翌日突然の訃報を聞いた時にはまさかと思いました。「野生動物は死ぬまで弱みを見せない」というのは学校の授業で散々聞かされた言葉でしたが、何というか、野生動物の「プライド」を目の当たりに突きつけられた気分でした。

彼らは動物園の中でも檻の中にいても、間違いなく「野生動物」なのだと実感しました。「いろんな動物に会える!」と単純に思って希望した動物園実習でしたが、改めて、物珍しさや動物が好きというだけでなく、様々な動物の内面に潜む野生に敬意を払って個々の動物に接しなければならない、と思わされた出来事でした。

本実習にあたっては、短期間ということであまり仕事の要領も覚えられず教えていただいてばかりな上に、知りたいことだらけで担当の方々を質問攻めにしてしまい、お手伝いどころか多大な負担をおかけしたものと思いますが、獣医の先生方と飼育担当の皆さまには本当に丁寧に詳しくご指導・ご教示いただいて感謝の念がつきません。

この場を借りてお礼を申し上げさせていただきます。本当に、本当に有り難うございました。

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