183号(2008年08月)3ページ
来園したダチョウのオス
1月22日にそれまでいたオスが死亡し、しばらくメス1羽でしてきました。新しいオスはすぐに導入できず数ヶ月待ちましたが、ようやく5月26日の早朝に新しいオスが到着しました。
ダチョウ舎への搬入は午後1番に行い、輸送箱に入れたままクレーンで放飼場まで降ろし、出入口シュートから室内へ入れました。まだ1歳に満たない若い個体なので、オスはそのまま室内で、メスは放飼場で別居飼育することにしていました。メスとの年齢差もあり、数日間お見合いをしてから同居を始めようと決めていたのです。
しかし、そのもくろみは見事にはずれ、なんと夕方には放飼場のメスに寄り添って歩いていました。初めはよくこの自体が飲み込めず、はたと考え込んでしまいました。
私以外に誰かがあの重いスライド式シュートを開けたのだろうかと考えてしまいました。確認のため裏扉から室内に入りシュートを見た所、全開ではなく半開に近い状態でした。ダチョウがすりぬけることができるギリギリのすき間ができていたのでした。
数日前に、作業性をスムーズにするために潤滑油をさびた箇所に塗り、これまでよりも弱い力で開閉できるようにしたのが裏目に出てしまったようです。
若オスは外に出ようともがいてシュートに接触しているうちにすき間ができ、きっとそのすき間から出てしまったものと思われます。
ダチョウは、ご存じの通り現在生息している鳥類の中で最も大きく、そして飛べない鳥としてよく知られています。
その繁殖生態は、まずオスがなわばりの中に巣となる浅いくぼみをたくさん作り、ゆるやかなつがい関係にある第一メスが産卵を始め、その他の順位の低い複数のメスが同じ巣に産卵します。その結果、巣内には卵があふれる程になります。
しかし、抱卵や育雛はオスと第一メスが行い、他の順位の低いメスは手伝おうとしません。ヒナは早成性といって、孵化してからまもなく親鳥についていけるようになります。複数の巣から孵化したヒナは大きな集団を作り、この群れを1羽か2羽の親が連れてあるくことが多いようです。
思うに、室内に閉じこめられた若オスは、これまで同じような他のヒナと一緒に飼育されてきたのが、ここに来て突然1羽になり大変不安な状況に追い込まれてしまったのでしょう。
シュートの外にはたった1羽ではあるが仲間がいます。合流しようと強力な脚でもがいているうち、わずかなすき間ができ、そのわずかなすき間から長い首を出し、外に出てしまったのでしょう。
よほど不安だったのかメスと合流してからは半月程はよりそってついて歩いていました。最近では単独で行動し、また換羽も進み、オス特有の黒と白の羽色に変わってきています。あと何ヶ月かするとオスの華麗(?)なディスプレイが見られるかもしれません。
(渡辺 明夫)