でっきぶらし(News Paper)

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185号(2008年10月)3ページ

<獣医実習を終えて>

8月4日から8日まで日本平動物園で実習をさせていただきました。

日本平動物園は小さいころ何度も連れてきてもらっていた思い出の場所であり、私の好きな場所です。そんな動物園で実習をすることができると決まったときは大変嬉しく思いました。

実習は動物病院に入院している動物たちの飼育実習から始まりました。動物病院には様々な理由で入院・飼育されている動物たちがたくさんいました。エサを作るなかで、その食材の種類の多さに驚きました。

動物種に合わせて切り方やエサの種類を変えたり、多くの工夫がなされていて、なぜそうしているのかという理由も丁寧に説明していただき、最初から、私の知らないことばかり、勉強になることばかりだ、という印象でした。

その後は獣医師の先生についていろいろなことを経験させていただきました。

朝夕の園内の見回りでは、動物たちのその日の採食の様子や便の状態、元気の有無などを飼育員のかたから先生が聞き、調子を崩している動物がいたら治療が必要なのか、少し様子をみるのかというような会話を毎日していました。

「動物のことを一番知っているのは飼育員さんで、ちょっとした変化にも気づいてくれるし、薬をあげてもらうのも飼育員さんだから、薬をだすときは飼育員さんがやりやすい方法にする」と獣医師の先生がおっしゃっているのを聞いて、動物園の獣医療は飼育員と獣医師との信頼関係の上に成り立っているのだと感じました。

これは、普段目にしている小動物臨床での、獣医師と飼い主との関係とまったく同じだと思いました。しかし、動物園ではやはり野生動物を相手にしているという点が大きく違いました。

薬の量や治療方法に教科書やプロトコールは無く、経験に基づくことが多いということです。なかでも、下痢をしている動物に対して、すぐに薬を飲ませるのではなく、椎やヤマモモの葉などを食べさせてみて様子を見るということがとても印象に残っています。

これらの木の葉には整腸作用があるそうです。野生動物だから自然のもので治るのなら、薬は飲ませないというやり方です。これも飼育員のかたや獣医師たちの長い経験のうえでの知恵なのでしょう。

飼育員の方たちや先生方が毎日記録している飼育記録や、治療記録が後の重要な情報源になり、治療にも役立っているように思いました。毎日の地道な仕事が動物達を支えているのです。

また、それぞれの動物の性格の違いなども熟知されていました。これらは、毎日愛情をもって動物達に接している証だと思いました。

日本平動物園は傷病鳥獣保護センターにもなっているため、毎日たくさんの野生動物が保護されてきていました。鳥類が主体でしたが、たぬきやいのししなどもいました。害獣・害鳥とされている動物たちもいました。

野生動物と人間との共存という問題において、時には獣医師が厳しい選択をしなければいけないことを目の当たりにし、複雑な気持ちでした。どうすれば動物と人間との関係がより良いものになるのか考えさせられました。

動物園の動物たちに関しても、保護されてきた動物に関しても、その動物の体の性質や、食性、どのような病気になりやすいか、どのような怪我をしやすいかなど、丁寧に説明してくださいました。どれも私の知らなかったことばかりで、興味深く、とても勉強になりました。

大学の授業や教科書からは決して得られないものです。「動物のお医者さん」になるのに動物のことを何も知らないお医者さんになってしまうところでした。

5日間と短い期間ではありましたが、本当に貴重な経験をさせていただきました。日本平動物園を改めて好きになりました。お忙しいなか丁寧に説明、御指導くださった先生方、飼育員の方々に感謝します。この場をお借りしてお礼を申し上げます。ありがとうございました。

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