200号(2011年06月)4ページ
≪実習だより≫日本平動物園に行って
私はもともと、「動物園で働きたい!」という憧れがあり獣医学科を目指したので、今回実習をお願いしました。1年生ということもあり知識が少なかったのですが、獣医さん方、飼育員さん方のおかげで、貴重な体験ができました。
まず、印象に残っているのは、獣医さんの園内巡回に同行したときのことです。低温火傷をおったオオアリクイに軟膏を塗るため、おとなしくさせなければなりませんでした。獣医さんに教わったようにオオアリクイの肩あたりをポンポンとたたくと、オオアリクイは前後に揺れ始め、気持ちよさそうにおとなしくなりました。また、マレーバクの診療のときはブラッシングが大事だと教わりました。普段のマレーバクは危険なこともあるようですが、ブラッシングされると地面に寝転がり、ついにはいびきをかき始めました。こういったように、じかに触れて診察できる方が動物の体調管理がきちんとでき、動物にとってもいいのでしょう。しかし、こうしたことも、どうやったら動物がおとなしくなるか知らなければできません。それぞれの動物の特性を知ることがとても重要だと感じました。
2日目は、中型サル舎の掃除・えさやりを手伝わせていただきました。掃除を始める前、担当の長倉さんはサルたちのうんこの様子を見ていました。なんでも、その便の状態からも、サルの健康状態がわかるのだそうです。動物たちは口がきけないので、健康を維持するには、管理する側の観察力が大切なのだと思いました。長倉さんからは、それぞれのサルの特性(性格)-例えばアビシニアコロブスは貴族らしいので、えさはばら撒かずに一箇所にまとめてあたえるなど-も教えていただきました。種ごとに好むえさも違うし、人への対応も違って、とても面白かったです。さらに、お腹に腫瘍ができてしまったニホンザルへの投薬も見学させていただきました。パンに薬をはさんで、そのサルに手渡しで与えるのですが、賢いニホンザルは自分だけが仲間とは違うものをもらっていることに気づいてしまうそうです。ある時は、薬入りのパンをちぎって、薬を出してしまったと聞きました。そのため、薬を与えるときは、何食わぬ顔で、他のニホンザルにも同じようなパンを与えるのだそうです。ニホンザルの賢さに驚きました。
3日目からは、動物病院の入院動物のえさやり・掃除を体験させていただきました。担当の平野さんからは、管理側にとって一番大事なものは観察力だと教わりました。さらに施錠の徹底も大事だと、何度も何度も鍵の確認をしていました。こんな風に管理してくれたら安心だと思うとともに、ここまでしなければならないほどの野生動物を飼っているのだと、再確認しました。
入院中の動物の中にピグミーマーモセットの赤ちゃんがいました。すごくかわいくてずっとかまっていたかったのですが、獣医師の後藤さんから、入院動物たちが人になれすぎてしまっては困ると聞き、考えが変わりました。人になれてしまっては、退院したときに群れに溶け込めなくなってしまうのだそうです。本当に動物のことを考えるなら、突き放すほうがいいのだと、考えさせられました。
獣医師の菅野さん、金澤さんをはじめ、今回お世話になったみなさま、本当にありがとうございました。大学では決して学べない経験をさせていただき、いろいろなことを考えさせられました。学んだことは必ず、将来の糧になると思います。5日間お世話になりました。
鳥取大学農学部獣医学科1年 下橋 香奈