でっきぶらし(News Paper)

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205号(2012年04月)3ページ

小さな命に愛情を

 動物病院は園内で飼育されている動物達の健康管理施設である事は言うまでもありませんが、県の委託を受け野生傷病鳥獣の保護センターの役目もあり、県内各地の市民の方から年間400件程、多い年には600件程の保護依頼があります。
 依頼件数の多い月は、大体5月中旬頃から9月中旬頃、その中でピークは6・7月になります。月60件、多い時は80件近い保護依頼があり、何回も電話や無線での呼び出しがあり、仕事が途中で途切れることがしばしばあります。
 その大半は鳥類で、繁殖期と重なるため保護される個体はヒナから巣立ちまで様々、2つある大きなケージが一杯になってしまいます。もちろん自分で餌はとれないので、ドックフードやマイナーフード(九官鳥の餌)を水でふやかした物を与えますが、目の前を通る人の気配を感じる度に一斉に口を開けて鳴き、餌の催促をするのでそれらにピンセットで餌を口の中へ入れていくのに目の回るような忙しさです。
 鳥の種類は、スズメ、ツバメ、ムクドリ、ヒヨドリ等が多く、年によってはセキレイの仲間が多い時もあります。8月も中旬を過ぎますと、巣立ち中のものと思われる個体の保護(親鳥の目の前からの誘拐)が多くなります。これは巣立ちの練習中で親鳥が時々餌を与えながら巣立ちをさせていくのですが、まだ上手く飛べないのでケガや弱っていると勘違いをされて持ち込まれて来るものです。それが過ぎるとやっと息をつける時が来るという感じです。
 また委託業務ではありませんが、警察の依頼で違法飼育・拾得動物の一時預かり等も受け入れています。違法飼育は鳥類、拾得動物は外来種のカメが多いです。カメは多分小さい時に購入したものが大きくなって飼いきれなくなり、捨てたものかと思います。違法飼育の鳥類は摘発によって持ち込まれるので一度に数羽から30羽近い時もあり、そんなにたくさん飼育するケージや人手もないので一羽一羽飛ばして様子を確認し、大丈夫な個体は放鳥し駄目なものだけ収容し元気になるまで飼育という事になります。
 ところで法を犯してまで飼育しているわけですから、さぞかし鳥が大好きで大事に飼育しているだろうなと思いきや、まぁ汚い汚い。ケージは糞や餌がこびり付き、水鉢・餌鉢も同様。ケージに取り付けてある止まり木のすぐ下まで糞がピラミッドのようになっていたりします。中にはケージから逃げ出しても飛んで行かないように羽根を切り落としているものまであり、怒りを感じえません。
 傷病鳥獣・違法飼育などで持ち込まれた鳥類は、元気に回復し飛べるようになったものは晴天が続く時を見計らって放鳥し、元気になったものの自然界に帰すのが困難な個体は、サポーターさんに引き取られ余生を過ごす事になります。
 このように1年を通しピークはあるものの、病院に収容される動物達は途切れる事はありません。大型鳥類等を収容する部屋は数に限りがあるので、満室の時は空き部屋が出来るまでダンボールで過ごすなどという事がしばしばあります。1年中空室で入院患者を待つというのが、担当者や動物達にとっても大変素敵で幸せな光景だと、皆さんは思いませんか?

動物病院担当 池ヶ谷 正志

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